本章★ do or die..(長編)★

□THE COUNTERBALANCE
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ローについて行って入った所は食堂だった。
ローはずかずかと一番奥の席へ向かい、腰かける。
私はどうしていいかきょろきょろしていると、
「おーショーちゃん!!こっちこっち!」
シャチが手招きしてくれて席を空けてくれた。
「シャワー浴びて綺麗になったな!
泥だらけでわからなかったけど、お前結構いい女だな。」
おいおい、泥だらけで悪かったな。
「あ、こいつペンギン!」
よろしく、とPENGUINと書かれたキャップを被った男が言った。おお、分りやすい。ってかここの親もすごい名前つけたな。
「ってか、ショー。服ぶかぶかすぎるだろ!!
逆に萌?!」
わははと指さして笑われた。
嗚呼、本当先行き不安。

食事は賑やかに行われた。
しばらくして、ローが口を開く。
「皆に話がある。
知っていると思うが、今日新入りが入った。
おい、自己紹介しろ。」
皆の視線が私に集中する。深呼吸して立ち上がった。

「はじめまして。ショーです。
えと、よろしくお願いします!」
「「それだけかよー!!」」
とわいわいとガヤが飛んでくる。
こんなガヤガヤした空間は初めてだ。いつも目立たず影に生きてきた。急にこんな注目されるなんてどうしたらいいかわからない。私はツナギをぎゅっと握った。
「ハイハイ!出身はどこですか!」
「身長は!?」
「チャームポイントは??」
次々と飛んでくる質問に恐る恐る私は答えた。
「ハイ!スリーサイズは?」
おぉー、と出る歓声。出かした!と向こうの方で合いの手。
「えと、8・・・」
「おい」
ローの一声がシンとした。

「こいつには指一本触れるな」

「おぉー??
キャプテン、それは俺の女に手を出すなって意味ですかい?」
ペンギンがこのこのーと腕を左右に振る。
ペンギンを一睨みするとニヤリと笑った。

「こいつは能力者だ。」

皆の視線が私に突き刺さる。
その視線は小さいころから感じていた、軽蔑や化け物を見るような目つきでなくて、まるで羨ましがるような目つきだった。
「うぉおおお、ついに我が海賊団にも能力者が増えた!!」
男たちが握手を求めて駆け寄ってくる。
ちょっと待って。今何か海賊団っていった?
「ようこそ、ハートの海賊団へ!!」
「わわあ!近づかないで!
って海賊!?海賊ってどういうことですかー!!!」
皆聞いちゃくれない。
「ククッ・・・そいつに触ると生気を吸いとられるぜ。」
皆がぴたりと止まる。
た、助かった。皆をミイラにしなくて。
事実なんだけど、あからさまに後ずさるのは傷つくなあ。。。
「ショーちゃん、傷も治せるんだぜ!
なあペボ」
シャチがペボの肩を抱きながら自慢げに言う。
おぉ、と声があがる。

「ええ、なので“医者いらず”です。」

恥ずかしさを隠すために冗談まがいで言ってみた言葉で、一気に皆の空気が凍りついた。
そしてみんなの視線がローへと移る。
「・・・ケンカ売ってんのかてめえ」
え、まずいこと言っちゃった?!
「ショーちゃん、キャプテン医者なんだ。」
シャチが耳打ちしてきた。
おおっと・・・・。
どうしようこの雰囲気・・・。




ドゴォ・・・ン!!


船体が急に傾いた。
「何事だ!」
「大変です!ピラニアの大群がこちらに向かっています!!」
窓の外を見ると見たこともない大きさのピラニアが数百以上こちらに向かって泳いできていた。
「浮上させろ!!」
「「アイアイ!!」」
ばたばたと船内が忙しなくなる。
私はどうしたらいいのかわからず、窓の外のすさまじい歯をしたピラニアを見た。
ガタンっと船体が傾く。ものすごい速さで海の上へ行こうとするもんだから、食堂の椅子や机が部屋中を右往左往した。
「うわっ、うわっ!」
よたよたしていると、ガシっと節くれだった手に肩を掴まれた。
周りには薄い膜。
「・・・ロー。」
見上げると険しい顔のロー。横で並ぶと一層ローが高く見えた。
「お前も来い。」
「ぇ、どこに??」
「あの肉食魚屋を倒す。」
「えぇ?!」
食われたらひとたまりもないですよ!


ばたばたと階段を駆け上がりドアを開ける。
ちょうど船が浮上し終わった所だった。
「うわぁつ!」
私はその場にしりもちをついた。
長くて鋭い歯をもったでっかいピラニアが、すごい速さで海面から飛び出ては海へ消えていく。
また一匹、もう一匹と海から襲いかかってきた。
ローは肩に担いでいた長い刀を抜きだした。
「おい、俺の空間に入るなよ。」
「私はどうすればいいの?!連れてこられても何もできないし、こんなピラニアなんて見たことないー!!」
ローはニヤリと笑った。
「・・・ずいぶん威勢がよくなったじゃねえか。」
何でだ!パニックになって叫んでるのに、コイツは助けてもくれないのか。
「食われてもお前、死にはしないだろ。自分で考えな。」
船内からぞくぞくと戦闘員が出てきた。みんなそれぞれ銃をもってピラニアを打ち落とそうとしている。
「はええ!早くてなかなか打ち落とせねえ!」
ドンドンと銃声が四方八方で鳴り響く。
「わああ!」
「ペンギン!!ってわあああ!」
私の正面には今にも噛みつきそうなピラニアが。
隣にいたペンギンも一緒にかまれそうになっていった。
ドンッ、とペンギンをおしのける。
「・・・っ!!!」
ピラニアが私の肩に何本の歯を食い込ませる。
「ショー!!!」
ピラニアは息ができずに尾ひれをバタバタさせて、私の肩をえぐった。
「・・・ああっ!!」
痛みに遠のきそうになりながらも、私はピラニアを引っ掴んだ。

「“REJECTION”!!!!」

ビクビクビクッ!!!とピラニアはシュウシュウを煙を上げた。
「・・・ハァッ・・・ハァッ・・・・」
肩から食い込んだピラニアの歯を1本、2本、と抜く。飛び散る血を冷静に私は見下ろした。
まさかピラニアに食われるとは思ってなかった。
そして襲ってきたピラニアはというと、トラックに轢かれた様にズタズタにされて形もなかった。
REJECTIONは、傷を与える能力。私が今まで負った傷を吐き出すのだ。
ピラニアに打ったのは、多分トラックにはねられた時のもの。
・・・グロいなしかし。
でもトラックにはねられた事がこんな所で役にたつとは思わなかった。

「ククッ・・・クククッ・・・」

乾いた笑い声が後ろで聞こえた。
「・・・ロー・・・」
気が付けばほかのピラニアは海の上で肉片となってプカプカ浮いていた。
「うおおおお!すげえ!!」
「なんだ今の!」
「ってか傷治ってる?!」
口ぐちに手を叩いて私を賞讃する。こんなこと一度もなかったので私はどうしていいかわからず、ただただ彼らの言葉に唖然として立ち尽くすだけだった。

「気色悪い能力だな。ククッ・・・」

「な・・・」

「ショー、気に入った。

改めて言う。

ようこそハートの海賊団へ。」


うおおお、と男たちが叫ぶ。
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