本章★ do or die..(長編)★

□THE RECOGNITION
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RECOGNITION

「ん・・・」
朝日が窓から差し込む。辺りからはぐおーというけたたましいイビキが聞こえる。
全然寝れなかった。今何時だろう。さっき朝日が出てきたから、朝の五時ぐらいかな。
潜水艦のモーターが遠くの方からゴゥンゴゥン・・・と床を揺らしている。

力を使ったせいで体は気だるいのに、目が冴えて寝つけなかった。
タワーから飛び降りたと思ったらいきなり孤島。一週間一人で生活して、久しぶりに会った人たちは海賊団。
チユチユの実を食べて能力を得たと、賞讃され、血だらけの自分を持ち上げる男たち。
そして。
右手を空に向ける。

私の手を握れる、ロー。

冷たかったけど、人肌を感じた。
”不気味な能力だな。
ショー、気に入った。“
名前、呼んでくれたけど不気味は余計だ。

しかし、あれだけ羨ましがられると正直怖い。


“ショーちゃんがおばあちゃんをミイラにしたぁ!わあああ!”
ちがう!ちがうの!
私はおばあちゃんをたすけたかったのっ
だってね、わたし木からおちた小鳥さんの傷をなおしたんだよっ
だから冷たくなったおばあちゃんも助けられるかなって、、、
“ショー・・・いったいお前は何をしたんだ”
“うぅ、、、お母さん可哀想に。。。こんなみじめな姿になってしまって・・・”

ちがう、ちがうの、

なおしたかったの!

うとうとしかけた私に突然フラッシュバックが襲ってきた。
閉じた目じりから涙が出そうになり、私は飛び起きた。
だめだ、今寝ると悪い夢を見そうだ。

私は飛び起きて、外に出る決意をした。

昨日のピラニア事件以来、潜水艦は海の上を漂っていた。
潮風が気持ちいい。
「おい」
振り返るとローがいた。本を片手に階段を下りてきた。
「・・・朝早いね。」
「馬鹿か。今から寝るんだよ。」
今から?ローは夜型なのか。それにしても不規則すぎる。
だから目の下くまだらけかのか。
まじまじと顔を見ていると、ローの顔が一層険しくなった。
「何見てやがる。」
はっとして首を横にふる。
「何も!」
そのまま気にせずローはスタスタ自分の部屋に向かっていたが、急に私に振り返った。

「夜、空けとけ。」

「え?」
だから、とローは面倒くさそうに頭をかいた。
「夜だ。手ほどきしてやる。」
そういうと奥の部屋に消えていった。
「・・・テホドキ??」



ほどなくして、他の船員が起きてきた。
朝食食べた後、ペボが船内を案内してくれた。
ペボは安心する。白くまだからなのか、人としゃべっている時よりも気がねなく会話できる。
何しろ、モフモフしているし、服着てるし、しゃべるしで。
とにかく私はペボにノックアウト。部屋の説明を受けながら、ペボの腕やら体やらをとにかくモフモフしていた。
「ショーちゃん、ちゃんと話聞いてる??」
「・・・・え??」
ペボに睨まれてもかわいさが急増するだけで、私はもだえるだけだった。
「もう、最後の部屋!ここが操縦室!」
操縦室・・・。私は一気に現実に戻った。
昨日はバタバタして聞けなかったけど、操縦室なら、地図があるはず。
きっと私がどこにいるのかわかるのだろう。
アジア?ヨーロッパ?
行くならイギリスがいいなあ。

何てのんびり考えていながら、そろりと中央の机にあった地図を覗き見る。
「・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・?!」
見たことない地図、大陸が縦に連なり、海を切っている。
地図を見ている私に気づき、話しかけるペボ。
「確かショーちゃんはイーストブルーって言ってたね。
ここらへんかなあ??」
ペボは日本がありもしない地図に指をさす。
「・・・・っ!」
日本・・・ねえよ!
本島も北海道もそんな欠片もみあたらない地図に私は唖然とした。
「今ねー、ここらへんかな?」
「グランドライン・・・。
これ、この世界の地図?」
「??何言ってんの?
ほかの世界の地図とかあるの??」

・・・・おやおやおや?

私の全知能フル回転で得た結果が大当たりを出したようです。
私は震える手をツナギの中に隠した。

ペボは色々説明してくれてるけど、言葉が耳に入って来ない。
嗚呼、どうしよう。
冷や汗も手の震えも止まらないや。
・・・・打ち明けたいけど、誰も信じてくれないよね。。。


そうこうしているうちに、夕食の時間になった。
「ショー!」
ペンギンが甲板でぼーっとしている私に話かけた。
「キャプテン起こしてきてよ!」
・・・・これからどうしたらいいのか考えを巡らせてたのに。
「何で私なの?」
「新人の仕事!絶対連れてこいよな!」
素直に返事をする私の影で、ペンギンはにやり。
“・・・なーんて嘘。キャプテン寝起き悪いからなぁー・・・。誰も起こしに行ってくれないんだよな。”

コンコン・・・。
部屋をノックする。返事はない。
寝てるのかな?
もう夜七時ぐらいですけど。
仕方ないと、ドアノブを回す。

部屋を開けると月の光がかすかに窓から入るだけで暗い。
私は本に躓かないようにベットに進んだ。
「ロー・・・?」
盛り上がったシーツが上下に動いている。静かな寝息が聞こえる。
朝日とともに寝て、夜に起きるって何て不規則な生活なんだろう。ホストか。
「ロー、ごはんだってー」
私は盛り上がったシーツの上から、頭であろう物体に声をかけた。
が、起きる気配はない。
「ローってば」
ふいに風が吹いた気がした。
「わっ、、」
シーツから長い手が伸びる。

「うるせえ・・・」

いつのまにはローは“ROOM”とかいうやつを発生させて、私を力強く手繰り寄せた。
思い切り引っ張られたせいで私はローの上に乗っかってしまった。
シーツの間からローの頭と目が出た。

帽子を取ったローを初めて見た。短くてくしゃっとした黒い髪。
そして、目は仄かに輝く月の光に照らされて綺麗だった。

「・・・・何見てやがる。」

はっと我に返る。
のけ反ろうとしたが、ローが私の腰を掴んでいることに気づいた。
「ちょ・・・」
ローがニヤリと笑う。
「お前、触れなれてねえだろ」
ドキ、とした。平常心を装って
「いや、そんなこと・・・」
「人に触れるとミイラにすんだろ?
じゃあお前は悪魔の実を食ってから、人に触れなくなった。違うか??」
「・・・・」
黙り込む私に不敵な笑みを浮かべる。
「俺が初めてってわけだ。」
腰に回していた手により一層力がこもる。
恥ずかしくなって私はローの胸を押し返したがびくともしなかった。
普通の人間ならもう干からびているはずなのに、彼の厚い胸はまだ鼓動をうっていた。

「無駄だ。
俺たちはお互い宿敵なんだ。
気長にいこうぜ。」

ゴクリと喉が鳴った。
静かすぎる部屋に響いて、お互いを見つめあう時間がとても長く感じた。
本当、クマさえなかったら綺麗な目。
よくみたら顔だちも端整とれてる。背も高いし、女の人にモテそう。
なんてローを見ながら考えていたら、ふっと彼が目をそらした、

「・・・・疲れた。」
そういうとローはぱっと手を離し、空間を説いた。

「メシだろ?
行くぞ。」

わざとシーツを私に投げて、自分だけ先に部屋を出た。
まだ心臓が鳴りやまない。耳の奥でドクドク言ってる。
ローが触った場所がジンジンする。


食堂に行くと、昨日と変わらぬ騒がしさがあった。
ペボたちが私にこっち、と手を挙げた。
「なあ!」
席につくなり、向かい合った私にペンギンが手招きをする。
机をはさんでペンギンに顔を近づけると
「キャプテンどうやって起こしたんだ?」
「え?普通に・・・」
普通に、といったあとシーツ越しに抱きしめられたことを思い出した。
「・・・・っ」
ペンギンはぽかんとする。するとシャチが
「おいおいー、大胆に起こしたんじゃねえだろうな!」
わははと机をたたく。笑いごとではない。
「でもキャプテンが不機嫌にならず起きてきたのって珍しいよね。」
隣に座っていたペボがスープを掻き込みながら言う。
たしかに、と皆うなずく。
相当寝起き悪いんだね。
本人はというと、新聞をよみながら片手間に食事をしている。

「ショー」
低い声で呼ばれてビクリと肩があがった。ローだ。
「後で俺の隣の部屋に来い。」
言い放って彼はそそくさと食堂を出ていた。
出て行った後の男たちの騒ぎよう。
ヤバイヨヤバイヨの連呼。
「ショー、気を確かにな!」
「がんばれよ!ショーならやれる!」
涙をためながら言う船員もいた。
一体何があるんだ・・・・?


食事を済ませた後、私は言われた通りローの部屋の隣に足を踏み入れた。
部屋は殺風景で何もない。
壁には木刀やら盾やら武器がかかっていた。
まるで道場みたい・
・・・・・・・・・・道場???
私は嫌な予感がした。
出よう。そう思って扉に向かうと、扉が開いた。今会いたくない人の顔が肩に刀を担いで現れた。
私の顔がひきつった。

「なんだその顔」
「い、いや・・・。
やっぱ、やめにしません?今日は。ね?」
「何言ってやがる。」
有無を言わさず、抜き出す長刀。

逃げ惑う私、ゆっくりと間合いを詰めるロー。

「だ、だって意味ないじゃん!
お互い能力使えないんでしょ?」

「だからこそだ」
そう言ってローは右手を地面に向けた。
「”ROOM”」
鈍い音が私の耳を通り抜けた。
「昨日の一件で、俺は確信した。」
ローは私に近づいてくる。
「お前が食べたのは、チユチユの実だ。お前の能力はそれ以外考えられない。
しかし、実を食べて得た能力が矛盾する。」
逃げ惑っている内に壁に追いやられてしまった。
「チユチユの実は、“万物を治癒する能力”だ。
だがお前は“動物しか治癒”できねえ。
人間に触れるとその生命力を奪ってしまう。
何故だかわかるか??」

「い・・・いや・・・っ」
ローの手が私の肩を掴む。



「お前が、人間を拒んでいるからだ・・・・!」



金の瞳に見据えられて、私は息ができなかった。

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