本章★ do or die..(長編)★

□THE HYPNOTIST
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THE HYPOTIST-2-


地平線の向こうに船が消えるまで、俺はその場から動くことができなかった。
全員の体が動けるようになって、船を出す頃にはもうあいつらはどこに行ったのか見当もつかなかった。
「・・・くそがっ・・・」
鬼哭を思い切り床に突き刺した。
「キャプテン・・・」
「アァ?」
イラつく俺を傷だらけの奴らがドスの効いた声に怯えながら、心配そうに見つめる。
「・・・・」
俺は目を瞑って息を整えた。状況を整理して打開策を考えるんだ。


「重症の奴が先だ!オペ室へ運べ!!」


「アイアイ、キャプテン!」

オペ室へ向かう中、横目で敵を見た。
“もう死ぬのは見たくない”と言ってた奴が、何十人ともいえる屈強な男たちの足腰をたてないものにしていた。
どこかから落ちたように五体がボキボキに折れ曲がったもの、青白い肌になって泡を吹いて倒れているもの、血だまりだけで個体さえ残ってないものもいた。
相変わらず力のコントロールができずに、どういう傷を負わせるかショーは自身で選択できないままでいるようだが、オペオペの実と負けず劣らず残忍だ。
「・・・ククッ・・・」
死の外科医と呼ばれる自分の血が騒ぐ。



だがふと、ショーが顔を覆いながら泣いている姿を想像した。



チユチユの実は自身が負った傷をメモリーとして相手にも負わせることができるという。
この男どもの傷は、ショーが自ら自身に与えていたのではないか。
普通に暮らしていれば、残虐なメモリーなど増えるはずはない。



「・・・チッ・・・」


イライラが増す。
俺は焦りながらも、クルーたちの手術に向かった。




「キャプテン、襲ってきたのはおそらくこの付近の諸島を支配する、ナルシー王国でしょう。
船の旗にナルシー国の国旗が入っていました。間違いないです。」

手術を終え、操舵室に入った俺にシャチが状況を説明をする。
何百年と続いているナルシー王国。グランドラインでは小さな王国であるが、国王が病床に倒れてから第一王子であるエドワード4世が国の主導権を握っているという。
エドワード4世が政権を得てから、諸外国への侵攻がはじまり、今は何十もの島を支配する王国となっている。
怪しい目を持った奴が、おそらくエドワード4世。
右手の中指に大家の紋章の入った嫌に光る黄金の指輪をしていた奴に違いない。
そして奴にショーの存在を教えたのは、ショーが見逃したあの時の奴ら。
あの時無理にでも止めておけばよかった。
俺は拳を強くにぎった。

「王子は能力者と聞きます。
何でも王子の目を見ると、催眠術をかけられたように彼の命令を聞くとか。」

「俺らがやられたのもきっとそれですよ。
手も足も出せなくてただやられるだけしかできなかった・・・・。
キャプテン、ショーを取り返しましょう!!」
クルーたちがおお、と叫ぶ。


「いや、俺一人で行く。
お前らは船で待て。」


「それはダメです!危険すぎる!」
シャチがいつになく焦っている。
「ナ、ナルシー王国は、
ドレスローザと同盟国です!」
驚きを隠せずに、目を見開く。が、俺に迷いはなかった。


「・・・・ならなおさらだ。
いい機会だ。
ショーを奪いに行く。首都に迎え」

クルーたちが雄たけびをあげて、船は全速力で発進した。
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