本章★ do or die..(長編)★

□THREATS
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THREATS.

もう目の前には海が見えていて、あと少しの所で私は全身に電撃のような激痛が走った。
「うっ・・・・」
ローが振り向いて立ち止まろうしたが、「大丈夫!走って!」とそれを制止した。
玉がまだ太腿に残っていた。
痛みにはじきおさまるだろうと思っていたが、走るたびに奥に食い込んでいく。
でも止まれない。
止まってしまうとこの手を離してしまう。
捕まってしまえば二度あえなくなってまうのではないか。また私は一人になってしまう・・・!
そんな恐怖にさいなまれて私はローの手を強く握りしめた。
痛みで遠のきそうな自分の意識を必死にその思いだけで繋ぎとめようとした。
だが急にローは後ろを振り返り、私を抱き上げて肩に担いだ。

「ったく、痛えんなら痛えって言え!」

そのままローは走り出した。
私は泣きそうになりながらも、ローに聞こえるか聞こえないかぐらいの声で「ありがとう」と呟いた。
自然と前が見えない状態になり、走ってきた道を見ると、何十人もの衛兵たちが追いかけてきていた。




「「キャプテン!!」」
スーツ姿のローとドレスの私を見てみんなギョッとしたが、後ろから迫り来る敵を見てすぐに出航の準備に慌ただしくなった。

「すぐに出るぞ!
こっち来てシャチ、ペンギン、手伝え!!」

ローは私を担ぎながら、皆に指示を出して行く。
太腿から大量の血を流している私をみてただならぬ雰囲気を感じたのか、いつもじゃ感じられないピリっとした緊張感が船内に流れていた。

意識が朦朧とする中、今まで入ったことのない部屋に入ったことに気づく。
「キャプテン何で能力使わなかったんですか?!」
シャチが私をベットに乗せながら不思議がる。
「俺の能力は祥子の前では無効になる。
“ROOM”を使うと俺だけ移動して、祥子がその場に取り残される可能性が高い。
あの場で試して失敗してしまうよりか海まで走った方が確実だった」
手早く器具を用意し、ゴム手袋をはめながらローは言った。

「破るぞ。」

そう言ってローは長いロングスカートを太ももまで一気に破いた。
ガーターベルトが露わになり、シャチとペンギンは生唾を呑んだ。
「おい、何やってんだ!ショーをおさえろ。」
はっとして二人は私を抑え込む。
痛みで冷や汗がとまらず、肩で息をしないと苦しい。
目が霞んできた中、ローは私の頬に手をふれて、優しくかつ真剣な目をした。
「すぐに終わらせる。我慢しろ。」
私はゆっくり瞬きをしながらうなづいた。大丈夫。ローになら任せられる。

「うっ・・・。」

今まで感じたことのない痛みに、涙が止まらない。
二人が私を抑え込む。
「あああっ!!」
船中に私の叫び声が響き渡る。
痛い。しぬほどいたい!
玉が取れるころには私は意識をなくし、力なく押さえつけていた二人の手を離した。
意識がフッと途切れた。




「ん・・・」
気が付いた時には窓から朝日が差し込もうとしていた。
私はまだドレスを着たままで、血まみれで太ももまで破られたドレスを見ると、昨日の記憶が蘇ってきた。
弾丸が抜けきれずにローに取り除いてもらったんだっけ。
寝ぼけ眼で首を横に向けると、私の手を握りながらベットの端に頭を伏せて寝ているローがいた。
起こさないように上半身を起こして、そっと手を離す。
寝てる間にローは普段着に着替えていた。
「・・・ロー・・・」
柄にもないスーツまで着て助けに来てくれた。
申し訳なくて、でも嬉しくて、胸の奥がジンとしている。

「おい、何してんだ。」
シ―ツ越しに低くてこもった声が聞こえる。
「何って・・・ハッ!!」
ぼーっとローの事を考えてたが故なのか、
自分の手を見るといつのまにか私はローの短くてくしゃくしゃな頭をなでくり回していた。
「つ、つい・・・」
ローはむくりと起き上がると、いつもの不機嫌な顔の中にすこしはにかみがあった。
あれ、照れてる?
「ちょっ・・・」
ローは私の膝をたたせた。
やぶられたドレスはがっつり開いたスリットみたいになって、私の太ももをすべりおちた。
そして外されたガーターベルトから白い布が見える。
あ、包帯巻いてくれてたんだ。
「傷、見せろ。」
ローはやさしく触れながら包帯を解いていく。
包帯をとると、傷は跡形もなく消えていた。痛みももうない。
「チッ・・・治療のしがいがねえな。」
すみません、“医者いらず”で・・・。
「ひゃっ・・・」
ローは私の裏太ももに手を滑らせて、傷口があったであろう場所に口づけをした。
くすぐったくて足を動かそうとするにも、しっかり掴まれれて身動きが取れない。
そのままローは私の目を見ながら、太ももに赤い痕をつけた。

「何すんのっ」

早くなる自分の鼓動を抑えながら、声が上ずらないように必死に耐えて見せた。
でもローには焦っているのが分っている様子で、面白そうに不敵に笑った。
「声、震えてるぞ。」
そう言って私をその広い胸の中に抱き寄せた。
「ったく、無茶しやがって。」
「ごめんなさい・・・。

でも、助けにきてくれてありがとう。」

私が笑うと、ローはいつもの不敵な表情を残しながらすこしだけ優しく微笑んだ。
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