本章★ do or die..(長編)★

□THE RECONCILIATION
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Reconciliation

「・・・くそっ、どこいきやがった・・・・」
息が白い。
星は町の光と、薄黒い雲の中に隠れて、森の中は真っ暗だった。

「・・・うっ・・・ひっく・・・」

どこからか嗚咽が聞こえる。
目を凝らすと大きな木の幹に、少女が両手を顔で覆っていた。


ガザッ・・・


草の音がしたので、ビクッと体が跳ね上がる。
音の方向を見ると、見たことのあるブチ柄の帽子に長刀を肩に担いだ長身の男、
肩で息をしたローの姿があった。
「ロー・・・」
「ショー」
険しい表情で名前を呼ばれる。



「・・・っておい、こら!!」


私はとっさに走り出していた。
「何故逃げる!」
ローが追いかけてくる。
「ごめんなさい!」
会いたいと思ったが矢先に張本人がいて私はどうしていいかわからず、気が付いたら足が動いていた。
振り向くとローがすごい剣幕で追いかけてきていた。
やばい、バラされる!怖い怖いっっ

「ひいい、ごめんなさいー!!」
「だから何故逃げる!!」

いつのまにか森の中の草原に出てしまった。
隠れる場所がなくなってしまい、私は草原の真ん中にたたずむ大きな木の後ろに隠れた。
「ハァ・・・俺の話を聞け!
いいか、ツナギを脱げと言ったのはショーが賞金首として新聞に載ってしまったからだ。
そのツナギは目立つ。クルーと俺はいいにしても、お前はダメだ。危険すぎる。」

「・・・・・・」

ローの言葉に私は唖然とした。
ツナギを脱げと言ったのは、仲間ではないってことではなくて、
私を危険から守るため・・・・??
・・・・・私の勘違いだったの?

「っ・・・だったらそう言えばいいじゃない!」

嗚呼、何で素直になれないかな私。逆切れだよ・・・。

「ショーが打ち明けれてくれてなかった事に対して気が立ってた。
しっかり伝えれなくて、悪かった。」
ローが・・・・誤った。
あのいつも俺様なローが誤ったことに私はびっくりして声が出せなかった。
木をはさんで反対側にいたローがこちらに近づいてきた。

「だから俺のもとへ戻れ。
ショーは俺が守る。
一人にしない。
お前は仲間だ。」


腕を掴まれて、そのままローに見つめられる。
私の目から涙がとめどなく流れて、私はローの胸に飛びついていた。


それからしばらく私はローの胸の中でわんわん泣いた。

迎えに来てくれたことが嬉しくて。
仲間だと言ってくれたことが嬉しくて。




「ぐす・・・」
「落ち着いたか?」


無言で頷く。
ローが黙って大きな手で私の頭を撫でてくれた。



「私、自分が嫌いだった。」
それから私は、日本が異世界であるということを改めてローに伝えた。
両親から疎まれ、嫌われて児童養護施設に入り、自分の能力をひた隠しにして生きてきた。
いつのまにか私は自分で他人を遠ざけて、
孤独という感情の渦の中で“死“について考えるようになったことを話した。ローは黙って聞いてくれていた。
「だが悲しいかな、いつもそれを阻むのは呪いたいぐらい嫌いな私の力」
私はきゅっとローの服を握った。

「それでも一人、私を理解してくれる人がいたの。

私のおばあちゃん・・・」

おばあちゃん、という言葉を発するとさっき泣き止んだばっかりなのに、目の奥からまた湧き上がってきそうになった。
「でも、ある時急に胸を押さえて苦しそうに倒れてしまったの。
私どうすることもできなくて、冷たくなっていくおばあちゃんをただただ見ていることしかできなかった。」
「心不全か。」
「たぶんね・・・。
一度木から落ちた雛を治せたことがあったの。
それを思い出して私必死でおばあちゃんを生き返らせようと、力を使おうとした。」


「でも、発動したのは“拒絶”の力。
おばあちゃんは生き返るどころか、見るにも無残なミイラにしてしまった。」
丁度帰宅した両親にその場を見られて、私がおぞましく不思議な力を持っていることに気づいて、気持ち悪がった。
“おかあさん、ちがうのっ!きいてっ・・・・”
“触れないで!”
「母は私に触れるのを拒んだ。
その眼は今まで我が子を抱いていた母の顔ではなく、まるで、化け物でもみるような顔だった。
幼ない私には、それはそれは辛かった。」
泣きそうになりながらも、無理やり口角をあげて紛らわそうとした。


「あるとき私はその世界で一番たかいタワーに上って、飛び降り自殺を図った。
きっと跡形もなくなるぐらいぐちゃぐちゃになって、再生できないだろうと思ったの。」
でも気が付いたら無人島についてた。
そして、ローたちハートの海賊団に会った。
船の中で海図を見た時に、次元か時空を超えたのかよくわからないけど、私の知らない世界に来ていることに気づいた。

「ハートの海賊団は、私が生きてきた中であったこともない人たちばっかり。
素性の知らない私に、明るく接してくれた。
私の力について、羨ましがって、喜んでくれた。
お兄さんみたいに優しいシャチ。
天然だけど人気者のペンギン。
モフモフのベポ・・・・」
「―――・・・なんだモフモフって。」
真剣に話を聞いていたローに思わず突っ込みを入れられた。
そして、

「私に触れる、ロー。」

ピク、とローの腕が一瞬動いた。
「・・・低血圧なのか、指先めっちゃ冷たいけど。」
「悪かったな」
「でも、温かい。
私、びっくりしたの。
私が触れるとミイラにするのは、“お前が、人間を拒んでいるからだ”ってローに言われた時。

それは、チユチユの実について知ってたからだと思うけど・・・・

でも嬉しかったの。初めてだったの。」
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