本章★ do or die..(長編)★

□THE INTIMACY
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Intimacy

「・・・・・」
「・・・・・」



き、



きまずっ!!!!


しばらくして唇を離してから、それから二人黙ったままだった。
でもローはまだ私の肩を抱いていて。
こういう時どういう言葉をかければいいんだ?
よかったよ、的な?
いやいや、何かそれすべて事が済んだ時にいうやつか?
ってか、そもそも何も始まってないし!
キス・・・してたけど・・・・これってどういう意味なんだろう?
普通だったら告白なんかされて付き合ってからだよね?
でもローは経験値高そうだし、異世界だから特に何もないのか?
アメリカ人で言えば、HI!的な。

「ククッ・・・」

ローが肩を震わせて笑っている。
「お前、百面相なってんぞ。考えてることが顔に出てる。」
「え?!」
思わず両手で頬に手をやった。

そうして軽いフレンチキス。

「っ・・・ちょっと!!
何すんのっっ」

「何すんのって、さっきまでしてたじゃねえか。
何で今更恥ずかしがるんだ。」

「・・・そりゃ、そうなんだけど
恥ずかしいでしょうが。
ってか・・・・何で?何でキスしてんの?」
「したかったから、した。」

それ答えになってんだかなってないんだか。


「いやいや、
そういうの慣れてないんでやめてください。」
「今から慣れたらいいじゃねえか。
俺が色々教えてやる。」


「?!遠慮する!!」
体が危険信号を察知しました。
ローが舌打ちをして、静かに立ち上がる。
「行くぞ。」
そう言って私に手を差し伸べた。
立たせてくれた後、その手はまだ私の手を握ったまま歩き出した。

皆がいるという店に行くまで二人とも黙ったままだった。
私は恥ずかしくってじわじわと石畳につもる雪とにらめっこ。
当のローは何だか機嫌がいいようで、口元に笑みを浮かべながら時折顎髭を撫でている。


「おー、来た来た!!」
「何やってんだよショー!!」
開けた扉の中には白いツナギを着た集団。
見慣れた服装を見てほっと胸をなでおろすと同時に、
勢いで飛び出した自分の行動は、
もしかしたら二度とこの集団を見舞えることができなかったかもしれないと思うとぞっとした。
店は酒場のあつまる通りの、またその奥の場所にあった。
つまりは海賊に似つかわしい荒くれ者が集まりやすい場所だった。
その中でハートの海賊団は自ら海賊旗を背中に背負った制服をきているので目立って仕方がない。
しかも全員それがさも当然で、周りの視線をもろともせず店の真ん中の席を陣取っている。
ローはその塊から少し離れたカウンターの席に、長刀を肩からおろしながらドカッと座った。
「ウォッカ。」
目の前でビクついているバーテンに一言。
「こいつにも同じやつ」
親指で私を指す。
嗚呼、飲めってことね。。
飲みますとも。さっきのこと忘れるほど泥酔したい気分なのでね。

「ショー・・・」
集団に再度目を向けると、目に涙を溜めたベポ。
「ごめんね、心配かけちゃった。」
私ももらい泣きしそうになるのを堪えて、ベポの頭を撫でた。

「みんなもごめんなさい!
信じてもらえないと思って黙ってました。
あの・・・っ・・・それ・・・で・・・」
言葉より感情が先走って、涙が出そう。
みんなに伝えたいのに、伝えたい言葉があるのに・・・。

「んぐっ?!」

急に後ろから腕が伸びて私の頬をつかみ、ボトルを直角に向けて勢いよく液体を喉に流し込まれた。
透明色のそれを見て水かと思ったが、ローがそんな生易しいことするわけない。

「宴の場でそんな辛気臭ぇ顔すんじゃねえ。
酒がまずくなるだろうが。」

喉から食道そして胃が焼けるように熱くなるのを急激に感じた。
ボトルから口を離そうとするのにローがそれを許さない。
バーテンが、そのボトルから注いで出す予定だったロックグラスを持って口をあんぐり開けている。
私はというと内臓がアルコールの熱さで麻痺していく感覚を覚えながら、ローの指を必死ではぎ取ろうとした。
・・・・ビクともしない!
指に彫られた“DEATH”のワードが厭に目につく。

「っぷはぁ!!
って、ゴルァ!!!」

意識が朦朧とする中、手の甲で口の水滴を拭いながらローを睨みつけた。
ゴルァ、って今私すごい声出たぞ。
ローはニヤニヤしながら空になった瓶を床に投げ捨てる。
「やっと素が出たじゃねえか。」
そして無言でロックグラスを天高く翳す。



「乾杯」


「「「「「かーんぱーーーーい!!!」」」」



待ってましたと言わんばかりにハートの海賊団が声を張り上げる。
ふらふらする私にペンギンが肩を叩いて、席に誘導した。
それに唖然と口を開けながら指さすシャチと周りの皆。ペンギンはきょとんとそれを見返した。
「お、おま・・・
お前、ショー触ってるっ!!!」
ペンギンがびっくりしてぱっと手を離すが、何もない。
「あれ・・・?」
私も急に触られて気が付かなかったけど、

私、もう、大丈夫、なんじゃ・・・・、、


「克服したんじゃねか」


振り向くと二杯目に手をかけるローが口元を釣り上げて笑っていた。
「おお!よかったな!ショー!!!」
皆がわらわらと私の肩を叩きにやってきた。
お酒のせい?
ううん、多分違う。
皆を私が信じようって思ったから。
そしてローがその背中を押してくれたからだ。


人の感触がこんなにも心地いいなんて。
今まで拒絶してたのは一体なんだったんだろう。
それが可笑しくて、可笑しくて。
みんなもニコニコしている。

嗚呼、私いま心からお腹を抱えて笑ってる。

笑い泣きしながら、私は全員とハグした。
「おい、」
後ろから低い声が響く。そうして人差し指を上に向けて手招きをする。
「一人忘れてねえか。」
体が一瞬飛び上がる。ビクついてる私をみて不敵に笑うロー。
「い、いいじゃんローは」
「野郎に抱きしめられてんのを見てやったんだ。
当然、最後は俺だよな。」
「い、いやいや。」
「船長命令だ」
おかしいだろそこで船長命令を発動するのは。もっと重要なところで使ってくれよ。
私がたじろいでいると、皆悪びれもせず「さあさあ」と私の背中を押してくる。
ローは私が押されて近づいてくるのをカウンターの椅子に座って見ている。
「う・・・」
椅子に座っているとはいえローは長身だから、私が立っていてもすこし目線が高かった。
でも抱きしめられる時はいつもローの胸が目の前にあったので
今の状況は私の心臓の鼓動を早めるには格好だった。
頬杖をつきながら私を見つめる。

「し、失礼します!」

目を瞑りながらがばっとローの首に抱き着く。
「おおー!!」
と後ろの歓声が遠く聞こえるぐらい自分の心臓の音がうるさい。
ぎゅっとしてからすぐに手を首から離そうとしたが、
ゆっくりと優しく背中に手を回されてローに抱きしめ返されてしまった。
今までローは力強くかつ乱暴に私を引き寄せてたのに、この時だけは何故だかガラスでも触るかのように繊細な動きをした。
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