本章★ do or die..(長編)★

□THE INTIMACY
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――――


優しさに心を温めていると、来ました。
「んぐっ?!」
本日2発目。
やはり羽交い絞めにされたため、私の抵抗はローが瓶を床に放り投げた後で。
千鳥足になりながらもローに平手をくらわそうとしたが、余裕で交わされる。

――――・・・・それを何回か繰り返されたのは言うまでもない。


そしてローが私の口に瓶を突っ込むタイミングがもう神業で絶妙なわけで。
朦朧とする中、何とか頭をフル回転させがなら自分の過去とその世界について皆に伝えようとしていた。
呂律も、話の筋道もしっかりとはしてなかったけど、うんうんと聞いてくれて。
何とか明るい方向の話に持ってきたかったんだけど、私の19年間の話は掻い摘んで話してさえいても暗い話が多かった。
だからやっぱり辛気臭くなる。
そして奴がカウンター席から登場してガバガバ飲まされた。
それでもやっぱり伝えたくて、でもやっぱり暗い話になって。
悪寒がすると思ったら再びローが瓶を片手に後ろに立ってる。

それを何回か繰り返されて流石に私が学習した頃には
なるべく暗い話にもっていかないように明るい話に切り替えた。
ただ不可思議なのは、それ以外にもクルーたちが私の肩を抱いたり触ったりしても思いっきり飲まされた。



「そんらね、こんなせかいにとばされて
わらしが、しょうきんくびなんれ、わらっちゃいますよね!!」
キャイキャイと机をバンバン叩く私を見て呆気にとられるペンギンとシャチ。
「@▽xc4%%・・・・・」
「何言ってんのか全然わからんww」

わけもわからないまま、気が付けば私は出来上がってしまっていた。

「キャプテーン・・・キャプテンの所為ですからね。」
シャチにもたれ掛る私に俺は何も悪くないといったように両手をあげる。
それを見たローは、一気にロックグラスのバルカンを喉に流し込む。
「アァ、お前は悪くねえ。
だがバラす。」
シャチがビクついたのをみてクククと笑う。
「本当、あれだけ飲んだら気絶してアル中にでもなりそうなのに、
この小さい体によくあれだけのアルコール入ったよな。」
解読不能な私の言葉を尻目に、恐る恐るシャチは私をひっぺがそうとする。
「でもショーいつもダボダボのツナギ着てるからわからないけど、
人間からみるといい体してるんじゃない?」
オレンジジュースを飲みながら何の悪気もなしにベポが言う。
それを聞いて辺り一帯に急激な冷気が漂った。
「ん?
何かまずいこと言った?」
ぽかんと開けた口から犬歯が無造作に見えた。
「み、見たのか?」
ペンギンが生唾を呑みながらベポを指指す。
「うっかりお風呂場開けちゃった。」
店内が一層凍りつく。冷源をたどっていくと、すでに鬼哭を担いだローの姿。
「わぁああ、ベポはメスグマにしか興味ないんで!
勘弁してやってください!!」
必死にベポの前に両手を振りながら制御しようとするシャチ。
「・・・くまですみません・・・」
何故かすっかり項垂れるベポ。
ローは無言の威圧で近づいてきたが、鬼哭を振り上げることなくゆっくりと屈んで
椅子から転げ落ちそうなショーの肩を掴んで掬いあげた。
そうして両腕でショーを抱え上げる。
「お前らはまだ飲んでろ。寝かせてくる。
バーテン、上の部屋は空いているか。」
カウンターの奥にいたバーテンは怯えながら何度も無言で頷いて、2階を指さした。






「キ+p@いrp0*♪??」
「黙ってろ。」
階段を上っている際も、ショーは意味の分からない言葉を羅列していた。
黙れといってもずっと喋っている。
何を言っているかわからなかったが、それは同じ言葉を発して俺に何かを言っているようだった。
「ろ・・・」
「わかった、わかったから、明日にしろ。」
ショーを抱えながら鍵を開けて、ベットに横たわらせる。
うーん、と吐息交じりの声でシーツを掴んで丸まった。
その仕草が何とも愛らしく、自分の所為で酔わせたにも関わらず、もっと煽ればよかったと少し悔いた。
唯一聞き取れたのは、“みず”という言葉だったので、ローは薄明りのランプの中で水差しからコップへ水を移し替えてベットへ持って行った。
「キ+p@いrp0*♪??」

寝言の様に何かを喋っている。
いい加減にしろと言いたかったが、何かを訴えているようでその譫言が気になってきた。
コップを右手に持ったまま、左ひじを付いてショーの顔に耳を近付ける。
「・・・・いぃでしゅか・・・?」
「ア?もっとゆっくりはっきり言え。」


「ロー、キャプテンってよんでいいでしゅか・・・」


ショーの吐息交じりの声がローの耳元で燻る。
そのくすぐったさに胸が疼いたが、ショーの言葉によりイラつく。
「何でだ。
キャプテンなんて呼ぶな。
ローでいい。」

夢への船をこぎながらローの言葉を聞いたショーは、少し落胆しているようだった。
「だって、なかまなんでしょ・・・?
みんなローのこと、キャプテンってよんでるじゃない・・・。
わらしもよびだい・・・」

ローは驚いたように一瞬目を見開いた。
思わずショーにと汲んできた水を一口ゴクリと流し込んだ。

「アァ、ショーは仲間だ。」


「えへへ・・・」
「だがキャプテンとは呼ぶな」
「アイアイ・・・」
安心したのか、ショーは笑顔のまま夢の中へと入っていった。
ショーが寝たのを見届けて、
ローは針の様にチクリと痛んだ自分の胸の違和感を隠したまま水を口に含み、
少し開いていたショーに流し込んだ。


ショーは満足そうに喉を鳴らす。




「・・・・俺も大概だな・・・・。」





無言でショーを見つめるその表情は、今まで誰も見せたこともないものだった。
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