本章★ do or die..(長編)★

□NEARBY
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NEARBY…



あの冬島からでて早3日。
氷点下だった気温はだんだん春風に吹かれながら温かくなり、薄手のシャツでも暑いぐらいだ。
手伝えそうな仕事は手伝って、一段落したので甲板に出て、すこし生暖かい潮風に髪を揺らしていた。
汗ばんだ体を冷まそうと、ツナギの上だけを脱いで袖を腰元で結んだ。


「これくらいの気温が一番動きやすいよね・・・」

航海は順調に進んでおり、このまま行くと4日でシャボンディ―に着く。
ドフラミンゴの言っていたシャボンディー諸島。
行かなくて済むのなら行きたくない。
だって、私は決めたんだもの。
この世界で生きていくって。


「おー、こんなところにいたのかショー」
私は少し動揺しながらも、後ろを振り返ると仕事がひと段落したであろうシャチが欠伸をしながら近づいてきていた。

「ずっと海の中だったから、外の空気を吸いたくて」


「そうか」
そう言って私の隣で手すりに両肘をついた。
「似合ってるぞ、そのタトゥー」
「ありがとう」
タンクトップの後ろから見えるハートの海賊団のジョリーロジャーを見てニカッと笑う。
「体は大丈夫か?」
「うん、何とか。誰かさんと違って訓練も皆手加減してくれるから次の日も疲れが残りにくい」
「あはは、それもあるかもしれないけどショーの体力がついてきたのもあると思うぜ」
船に乗ってから、みんなとの特訓に参加するようになった。
私なんか全然はりあえないから、体力トレーニングばっかりだったけど
それでも必死でついていく自分を皆温かい目で見てくれていた。
いつもアホばっかやってるけど、訓練はすごく真剣に取り組んでいて、
何だか変な感じだった。でもいざというときの戦闘に備えて基礎はしっかりしなければという
考えは染みついているようだ。
「キャプテンはスパルタだからな・・・。俺は一回泡吹いて倒れたことがある。」
「え、シャチだったの?!
ベポから泡吹いて気絶した人がいるって聞いたことあったけど。」
「あれは酷かったな・・・。」
驚きながらも、相手が意外にもシャチだったので少し笑ってしまった。
そして“キャプテン”という言葉に切ない気持ちになったのをシャチに悟られまいと
さりげなく髪を掻きあげながら目を瞑った。
「最近、ってか出航してからあまり見ないね」
「ああ、キャプテン部屋にだいたい籠りっきりだからな。」
「いつも何してんの?」
「さあなあ・・・。朝寝て夜起きるから実際会わねえ時は一週間ぐらい顔合わせない時もあるぞ。」
・・・引きこもりか。もしくはホストか?
そんだけ会わなければ航海に支障がでるのではないのか。
「ショーも海出てから一度も会ってねえんじゃね?」
「そ、そういえばそうね。」
知ってる。もう3日間ぐらい会ってない。
訓練もローに頼みたかったけど、会わずじまいだったからみんなとの訓練に参加している。

「会いたいか?」

「・・・・・」
素直に言えたら好いんだけど、喉まで出かかった言葉をゴクリと飲み込んだ。
だけどシャチの言葉を軽くあしらえる様な冗談は私は持ち合わせてなかったので
黙りこくってしまった。
結局シャチへの答えに対してのその反応が“YES”ということになった挙句、
シャチは面白そうにニヤニヤしはじめた。
「部屋除いてみれば?」
「い、いい!」
踵を返して急いで船内の扉を開けた。
「素直じゃねえんだから。」

「まったく・・・。」
食堂へ向かおうとした私の足は何故かそこを通り過ぎて奥へと進めてしまっていた。
目の前には船長室。
ローは何をしているんだろう。
寝てるのかな。
本を読んでるのかな。
今入ったらどんな反応するんだろう。
怒られるかな。
喜んでくれるかな。
色んなローを想像する。


「・・・・」
ってか、何で私こんなローのこと考えてるんだろ?
クルーの皆と顔合わせてるし全然さびしいことなんかないのに
ローに会わないとしっくりこない。
毎日顔を見ないと気が済まない。

それはやっぱりローがキャプテンだから?

仲間だと言ってくれたから?


とは思ってみたものの、私の中で腑に落ちない。
「いや、でもそういうことにしとこう。」
両手を叩いて無理やり自分を納得させ、食堂へと向き直った。

「どういうことにすんだ?」
「わあああ!」

振り向くと寝起きで目つきの悪いローがドアにもたれ掛りながら私を睨んでいた。


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