本章★ do or die..(長編)★

□THE ASSEMBLY
2ページ/2ページ


――――
私たちがやり取りをしていると、急に悪寒が走った。
いや、それよりももっと鋭い何かが体中を襲う。
殺気だ。
「っ!?」
眩暈がしてその場にへたれこんだ。地面にぶつかりそうな所を、ローが右腕を差し出して受け止めてくれた。
「あ、ありがとう・・・」
「覇気だ。」
「は、覇気・・・??」
ローは私を抱えながらも、会場のステージを見ていた。
そこには白髪のおじさんが笑みをうかべて立っていた。
気が付くと周りの大半が口から泡を吐いて気絶していた。


『犯人は速やかに
ロズワード一家を開放しなさい』
拡声器から放たれた声が会場の外から聞こえた。
「ロズワード一家って??」
「そこに倒れている宇宙人みたいな奴らだ。天竜人。」
シャチが指指したのは、カーペットに突っ伏している男。
「あれ、天竜人が何しても手を出しちゃいけないんじゃなかったっけ?」
「あいつが手を出した。」
そうして別の方向に指さしたのは同い年ぐらいであろう少年。
「もしかしてあの子が麦わら??」
ひょろっとした体格の彼が億越えのルーキーとは思えない。むしろ先ほどの麦わらの海賊団の外見から見て至って普通な感じがした。

「俺たちは巻き込まれるどころか、完全に共犯者だな。」
そう言う割には面白そうなローを見て、私は顔が引きつった。
「麦わらのルフィの噂通りのイカレ具合を見れたんだ。
文句はねえが・・・大将とぶつかるのはごめんだ。」
向こうから、さも悪そうな赤髪の男が口を開く。
「もののついでだ。
お前ら助けてやるよ」
ある程度のやり取りの中、その赤髪がとんでもない言葉を口にする。
ローを見ると明らかにキレていた。
嗚呼、なんてことを。平和にそそくさ逃げたかったのに。
私とベポたちは頭を抱えた。

「ロー!」

その言葉も聞こえているのかいないのか、ローは二人と肩を並べてズカズカと出口へと向かってしまった。
「ショー、仲間に会えてよかったわね」
「ナミ・・・。
ってか、こんな状況で会えても全然嬉しくないんですけど・・・。」
あはは、とナミは明るく笑った。
太陽のように明るい。私もこんな人になりたい。なんて、ぼけっと考えているとナミが私の肩を叩く。
「さ、キャプテン達が行ったんだし私たちも行かなきゃ。
お互い苦労が絶えないけどね!」
ナミの言葉にフフッと笑った。だが同時に私の中で寂しさが残った。
「ナミ、私たちここでお別れかしら。
次会う時は敵??」
「そんなことないわよ。
貴女とは、トモダチなんだから!」
ニカッと笑う彼女はとても綺麗だった。



外に出ると、
「うわ」
既に海兵が包囲していたものの大半がやられていた。
ローの力だけではない、三人とも能力者だった。



「そのタトゥー、ハートの海賊団か!」
海兵たちが気づいて私も先頭に巻き込まれる。
どうしよう、と鼓動を抑えながらも海兵たちを引っ掴む。
大丈夫、トレーニングしたんだから殺しはしない。

「“REJECTION”!!!」

力を加減して打ち放つ。
倒れるぐらいが丁度いい。
「くそっ」
銃弾が私を襲うが、それをものともせず向かいくる敵に真正面から向かう打つ。
「効かない!」
「う、動いた!
お前まさか!
死の救急救命士、ショー・・・・っ?!」
「だとしたらどうなの!!」

ハートの海賊団の名の恥じない働きをしたい。
私がそう決めたんだもの。
それは、私を必要としてくれる皆のため、



・・・・ローのため。


「”REJECTION”!!!」





悔いはない。

「ショー!」

戦慄の中でふいに懐かしい声が響く。肩で息をしながら私は瞬時にローの呼びかけに振り返った。
「行くぞ。」
指で手招きをして私を呼んだ。
ベポたちはまだ戦闘中だったが、ローは早々に切り上げるようだった。



「ったく、ショーは自分の力を過信しすぎると何度言ったらわかるんだ。」
会場からの逃走中、ローは苛立ちを私にぶつけた。
そんなこと言われたって役にたちたかっただけなのに、と口を尖らせていると
「ある程度の力のコントロールはできるようになったか、褒めてやる。」
「あ、うん・・・・」
あれ、褒めてくれた・。
「だが金輪際迷子になるな。今までどこにいっていた。」
ギロリと睨まれて私は肩をすくめた。
私はナミとロビンに会って服を買ってもらった事や、そのあとトビウオライダーズにここまで連れてこられたことの始終を話した。そしてその説明に対してローはそうか、と呟いた。
「・・・ローは何故女の人をクルーに迎えなかったの?」
ナミとロビンを見ていてやはり女のクルーは欲しいと内心思った。
「愚問だ。女がいると志気が下がる。体力の差は歴然で足手まといになる。
クルーとして女を迎え入れるつもりはなかった。」
「・・・・・」
何ともストレートな返答。だがローの考えは一理ある。
「クルーに迎え入れたとしても、娼婦として回されるだけだろうな。
いい女なら抱くに決まってる。」
「?!・・・は??」
「・・・・と、思っていたがショーは違う。
安心しろ。」
走りながら頭を撫でられた。
それは何とも言えない複雑な感情で。クルーとして認められるのはいいけれど、下手したら私もそうなってたって事なのかそもそも女として見てもらえてないのかよくわからなくなった。


「それと、お前これ持ってろ」

渡されたのは、電伝虫。いつ見ても謎の通信手段。
私の手のひらに収まる子電伝虫だった。頭にはローと同じ帽子を被せてある。
「ありがとう」
「迷子になったら面倒だからな。」
一言多いな、と思いつつ私はポケットにしまった。
「俺がショーを守ると言っただろ」
「・・・・うん・・・・」
前を走るローの顔は見えなかったけれど、逞しく広い背中を見つめていると
ずっとこのまま着いていきたいと心の底から感じた。

「・・・・・?」

ふと、走りながら背後に違和感を感じた。



寧ろ遅かった。



「旅行するならどこに行きたい?」




「!!!」


立ち止まってしまったため、遠のいていくローの背中。
「ろ・・・!!!」

振り返るローの姿がゆっくりと見えた。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ