本章★ do or die..(長編)★

□THE REPATRIATION
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Repatriation


「う・・・・」
泣きすぎて頭が痛い。
自分の額に手の甲を持っていこうとすると、ふと自分があたたかな布団にくるまれてたことに気づく。
目をあけるとそこは懐かしい天井。
手には丁寧に包帯がぐるぐる巻かれていた。

「あ!」
ガラッと勢いよく扉が開いたと思ったら、幼稚園ぐらいの子供が廊下に向かって叫んだ。
「しぇんせい!おきたよ!」
その声と共に遠くの方からすごい勢いでこちらに向かってくるスリッパの音が廊下中に響いた。

「ショーちゃん!!」

目に涙を溜めて姿を現したのは私の恩師・・・
「節子せんせい・・・」
先生の顔をいるということは、ここは私がずっとお世話になっていた児童養護施設。
ぼぅっと考えていると、先生は私に抱き着いた。
「もう、びっくりしたわよ!!
グラウンドに傷だらけで倒れてたんだから!」
「・・・ぇ、私倒れてたの・・・?」
「そうよ、それから一日目を覚まさなかったんだから。
病院に連れて行こうか迷ったんだけど――――・・・」
節子先生は相変わらずおしゃべりだ。
目覚めて間もない頭ではそのマシンガントークは右から左へと通り抜けてしまっていた。

私は徐に上半身を起こした。
節子先生の話を耳でうけながら、今は傷の跡形もない自分の手に巻かれた包帯を冷静にほどいていった。

嗚呼、私は長い夢でもみていたのか・・・・。

そう思えば何だか少し自分に納得させられるような気がした。
それでも何故か手が震えて思うように力が入らない。

きっと、夢だ。

夢だったに違いない。


「おねいちゃん、これかっこいいね!」

無垢な子供たちが私のタンクトップの背中を指さす。


「かいぞくみたいだね!!」




「・・・・・っ・・・・」


手の震えが止まらない。
「あら、タトゥーなんてしたの、ショーちゃん。
・・・・・ショーちゃん???」

涙が止まらなくなる。



声を押し殺して泣く私に、子供たちは不思議だと首をかしげる。
尋常ではない私の雰囲気を察した先生は、子供たちに出て行くように告げた。

そうして皆が出て行ったのを見送ると、先生は私の肩を抱いて、背中を優しくなでた。
「・・・っ・・・」
「何があったかは知らないけれど、
ここは貴方の家よ。
安心しなさい。」


「・・・っ・・みんなと離れちゃったの・・・っ!


今まで、すぐそこにいたのに。

死のタトゥーのあの指が、私の頭を温かくなでたのに。



「せんせいっ、さっきまでっ・・・いたんだよ・・・・っ」

嗚咽でうまく話せない私の背中を先生は優しく子供の時のように撫でてくれた。
流石のおしゃべりな先生も、この時は私の尋常じゃない動揺に
自然と口数も少なくなっていった。

私が少し落ち着いてきたことを見守ると、
先生はもう一度休めと言って私に布団をかけた。

こんな状況で寝れるわけがない、と思っていたが
涙が出尽くした私の瞼は重くそのまま深い眠りについた。

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