本章★ do or die..(長編)★

□the negotiation
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Negotiation

俺たちが一大事を知って動き出したのはそれから間もなくの事だった。
「キャプテン、このままだと間に合わないです!」
ペンギンがいつにも増して真剣な顔で俺に報告をする。
「そんな報告聞きたくねえっ。
何がなんでも急がせるんだ。」

「「アイアイ!」」

俺の言葉を皮切りに船内が騒がしくなる。

性にも合わない緊張感からかいつのまにか朝刊を握りしめる自分がいた。
冷静さを取り戻そうと、握りこぶしからしわくちゃになった新聞を開放してやる。

“ポートガス・D・エース 処刑執行!!”

朝刊の一面に大きく躍り出たタイトルは俺にとってこれが時代の幕開けとなるような酔狂な行動を促すのに必須なものとなった。
その紙切れは俺だけじゃなくクルー達の心を錯乱かつ高揚させ、マリンフォードへと航路を急がせた。
クルーたちはまだ見ぬ時代に、気分を躍らせ、また畏怖の念を抱いていた。
そして時代の戦場へと心を馳せさせたのは言うまでもなく、白ひげの登板、そして途切れた映像。
恐らくこの間に行われるであろう仕業は政府によって揉み消されるだろう。
この目に焼き付けておかないと“時代遅れ”になる焦燥にかられた。

俺もその一人となろうとしている自分を抑えつけ、冷静にペンギンに支持を出す。

潜水艇は今まで出したことのないようなスピードで海底を進んでゆく。
静かな海底に無数の泡が浮かんでは消えを繰り返す。
「ショーに、伝えなくてよかったんですか?」
慌ただしくクルーが動き回っている中、俺に聞こえるか聞こえないかの声でシャチが呟く。
表情は少し長い帽子のツバのせいでよく見えない。だが口角が少し下に下がっているのを見ると、これから起こるであろう事態に危機感を持っているのは確かであった。
「無駄に心配させてどうする。
お前らもアイツに何も言わなかっただろう。」

シャチは口を噤んだ。
そうだ、俺たちはショーにエースの処刑を、また俺たちがそれを聞きマリンフォードへと向かうことを告げなかった。

それは危険が伴うことを知っていた。海軍の本拠地に船を進めるのだ。
ただで帰れるとは毛頭思っていない。
また未知の世界へ行ったショーを心配させたくなかった。
ショーがいなかったからこそできる仕業だと、一瞬よぎったその感情がすとんと腑に落ちたことに驚いた。

しかし好機でもある。


そして今まで見たこともない決戦が目の前で行われるだろう。

この目で、この体で、

見なければ、体験しなければ・・・・。

ふと、頭の中でよぎる影。

―――・・・少し、待っていろ。
迎えに行くのにこれは必要なのだ。





そう自分なのか影なのかに言い聞かせるように一息呼吸を深く吐く。
「キャプテン!そろそろ真上につくよ!!」

ペボの声と共に湧き上がるプレッシャーから自然と笑みが零れる。
一声あげる為に吸い上げる息は鳴り響く鼓動と共に天高く響く。


「揚げろ!」




上昇する潜水艇上部より、煌めく水泡と共に眩いばかりの日光と、それに似つかわない男たちの怒号が厚い鉄鋼の外から地鳴りのように聞こえてきた。

相反する視覚と聴覚の混在は
俺の感情を高ぶらせるのには至極恰好だった。








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