本章★ do or die..(長編)★

□the negotiation
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遠くの方から騒音が耳を燻らせる。
私は寝ぼけ眼で目をこすりながらまだ夢の船をうつらうつらと漕いでいた。
喧騒が劈く弩号へと変わった瞬間、私の体を丸く包んでいたシャボン玉のようなものがはじけ飛んだ。

わぁああああ!
ドンッドンドドンッ
ガキンッ!ガキンッ!

右往左往から男たちの断末魔と武器やら何やらが飛び交い、そこは戦場と化していた。
「・・・・は?
ぇ、ええええええ?!」

確か私は寝ていたはずだった。
もふもふのパンダや超巨大なベポ人形に囲まれ幸せな現実の逃避行をしていたはず。
驚きと共に、久しぶりに発した大声が喉に響く。
そうこうしている内にへたり込んでいる私に気づかず男たちは真正面に倒れかかってきたり、踏みつぶされかけたりして、私は四つん這いでなぜか凍っている海に座礁した船の陰に隠れた。
「ハァ・・・ハア・・・」
驚きのあまり乱れる呼吸を右手で胸を押さえて何とか落ち着かせようとした。

私の服装は戦場には似使わない寝間着のTシャツと短パン、圧着タイプのニーハイソックス。
私の体温で下の氷が解けだし、じんわりと肌に冷水が響いてきた。その冷たさが私の興奮を抑える鎮静剤となりえようとしていた。

お、落ち着け私・・・・ッ!
何でここにいるの?!

先ほどの光景と感覚をみるからして、ここは確実に偉大なる航路。
夢でないことは、確か。
周りには大勢の海兵と海賊たち。海賊はほぼ同じ旗をかかげている。
そして戦いのなか銃撃戦など諸共せずぶつかり合う能力者たち。
自然現象とも言うべき、とてつもない能力の差に私は呼吸すら忘れてしまっていた。

私はギリと奥歯をかみしめた。
帰ってきたという高揚感と、これから起こるであろう絶望感。
もう一呼吸深くしてから、安全な場所を探そうとしたその時、

「ッッうわ?!」

偉大なる大地がいとも簡単に割れ、大きな爆音とともに地面が斜めに揺れ動く。
天変地異かと思ったが、割れ方が不自然だ。まるで何かに支配されたかのように円形に割れて隆起している。
って、冷静に考えてる場合じゃないってば!
このままじゃひっくり返って船の下敷きになってしまう!!!

「うぉおおおお!!!」

叫び声とともに海軍をなぎ倒しながら走りこんでくる一人の男。
「ブファ!」
目の前に落ちてくる私なんて目もくれず突撃してきた。口の中が切れて、鉄の味がした。
だが不幸中の幸いなのか、私は船の藻屑とならず寸でのところで免れたようだった。
混乱しながらも激突された男の背中を目で追いかける。

「・・・ルフィ??」

赤いベストに麦わら帽子、ルフィに間違いない。血相を変えて目の前の高台へと向かっていく。
「ルフィー!!!!」
戦場の喧騒の中、届くはずもない声を叫ばずにいられなかった。だって面識のある人はこの中でルフィーしかいなかった。
だが叫んだあと、彼の形相から急ぐべき事の重大さを伺えた。心中で落胆しながらもそれ以上彼に声をかけることができなかった。

「何だ、タイミングが悪いようじゃァねえか?」

降り注ぐ日光から似つかわない黒い鳥のような影。
「・・・・ドフラミンゴ・・・・」
空中から私の目の前に降り立つと、頬骨まで届きそうな大きな口から長い舌をだして私に笑いかけた。
「なァに、すぐ終わるさ
クックックッ・・・・」
耳障りな掠れた笑い声が響く。

ドフラミンゴは簡単に今の状況を私に伝えた。
ルフィーの兄のエースの処刑が執行されること、
それを阻止しようと総隊長の白ひげ一味が海軍本部に乗り込んできたこと。





「さァ、どうする?
死の救急救命士・・・・」





それはまるで私が来ることを図っていたかの物言いだった。












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