本章★ do or die..(長編)★

□THE FATALIST
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突拍子もない言葉だったと思う。

偉大なる航路の覇者を目指すローがこの光景を見たらどう思うだろう。

ライバルなんて少ない方がいいと思うけど、これだけの仲間と人望を持っているこの人を易々殺させるようなことはしたくない。

後方の仲間たちは振り返り、口をあんぐり開けて驚いている。
ハートの海賊団、という名はまだルーキーとしてしか一部の興味のある海賊にしか知れ渡っていないだろう。
だが、“チユチユの実”は喉から手が出るほど海軍も海賊も欲している能力者といってもいいかもしれない。
周りの海軍すら目を見開いて驚いている。



「お、おまえさんチユチユの実の能力者か?!」




白ひげの背後からこれまた大きな青い皮膚をした男が顔を出した。
私はええ、と頷き白ひげに手を差し出した。



「一瞬で終わらせます!だからっ・・・・」



ぽんっ・・・・





大きな白ひげの手のひらが私の頭に置かれた。





「気持ちは嬉しいが、そいつは息子たちに使ってくれねぇか?」





その言葉に一瞬思考が停止する。が、私は大きな手を両手で持ち上げて白ひげを見上げた。
「力のことなら、大丈夫です!!
あなた一人の治癒で力がなくなるわけじゃ・・・・」

言葉が続かなかった。白ひげは私を見つめ続けていた。


その眼は覚悟の炎を燃やし、瞳に映る私より遥か遠くを見据えていた。


何故か、涙があふれそうになってくる。



「宿命を変えるつもりはねえ・・・

だが万が一この戦いが終わって俺が生き残っているようであれば、
その時は嬢ちゃんを呼ぶ」



嗚呼、この人はここで死ぬ覚悟なのだ。
後ろで息子と呼ばれた海賊たちが戦いながらも「なぜだ!」「治してもらえよオヤジ!!」と口々に叫んでいた。




「チユチユの実の能力者がいるぞ!
傷を癒されたらまずい!今すぐ捕獲しろ!!」



海軍のでんでん虫から発せられた命令により、私も命を狙われることになってしまった。
でも私は白ひげのその深い深い目から視線を離せなかった。一筋の涙が頬を伝う。

「白ひげさん、生きてくださいっ・・・」

「ありがとうな」



そう白いひげを釣り上げ笑う姿は少年のようだった。



「嬢ちゃん、君も命を狙われる対象になってしまっとる!
安全なところに隠れておるんじゃ!」



そう青い肌の男に連れられて私はその場を後にした。





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