本章★ do or die..(長編)★

□the arrangement
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リストにある解熱剤を求めて薬局に入った私とロー。
ローは私にわからない薬剤なども薬剤師に頼み、紙袋一杯に買い込んだ。
待っている間、昨日の事もあるので気まずい雰囲気をどう打開すればいいのか
よくわからない薬品の陳列棚を見ているふりをして考え込んだ。


―――・・・やっぱりきちんと話し合った方がいい。


ローにはローなりの考え方があったんだから。

「おい」
「は、はい?!」
急に呼びかけられて肩が飛び上がった。
振り返ると怪訝な目をしているロー。行くぞ、と一言かけられて店を出る。
嗚呼、考え込んでしまって話できなかった。。
船に戻ってタイミングを見計らってもう一度話かけてみるしかないかな、なんて思っていると
ローは船とは逆方向へ向かっていく。
「ロー?
船はそっちじゃないよ?」
薄暗い薬局のある路地から賑やかな大通りへ。
「・・・知ってる。
ちょっとコーヒー飲みたくなったから付き合え。」
ぽかんとしている私に、これ以上なにも言わない様子でローは眉間に皺を寄せて
スタスタを歩き出してしまった。


入ったのは大通りに面したオープンカフェ。
がやがやと行き交う人を見渡せる外の席に私とローは座った。
ローはコーヒー、私はティーオレと頼む。
「・・・・」
「・・・・」
街の喧騒とは裏腹に若干気まずい雰囲気が二人を包む。

ギュッとスカートを掴むと私はローに向き直った。そうしてあのね、と切り出そうと口を開こうとした時、

「―――あの後色々考えた。」


長い脚を組み、コーヒーを含みながらローは急に呟いた。
「あっちの世界にとって、
異端なお前が歩んできた人生はどういうものだったのか。

抱え込んできたものが大きく、
そして一人で生きていくしかなかったことを。」

「え・・・?」

「だからこそ他人に頼らず
一人でつっぱしって行動する根源はそこにあるのだろうと。」

・・・すみませんね、一人でつっぱしってしまって・・・。
でも、ローの言うことは図星だ。私は口を噤んだ。

「俺もそういう時期があった。」

意外な言葉に私は目を見開いた。
「ローにも、そういう時期があったの・・・?」
ローは少し遠い目をして空を仰いだ。
ベビー5の時もそうだ、何故だか私の知らないローがいたと思うと胸が痛くなる。
それがどういうことなのか、私は若くまた経験が極端に少ない。

「完治したが・・・不治の病だったことがある。
死期が迫る恐怖と不条理な世界への恨みから
この世界をぶっ壊すためならなんだってやろうと思った。」

私は生唾を飲み込んだ。
ローは切羽の詰まった私の顔を見て少し驚いて口元を釣り上げた。

「今はクルーも、ショーもいる。だから大丈夫だ。

つまりは・・・だ。」

眉間に皺を寄せて口元に手をやりながらローは次の言葉を考える。
ローは頭の回転は速い分なのか、言葉足らずな所が多い。
でも今日のローはよく喋る。
だからこそ一言一言聞き漏らさないようにと
次の言葉を待ちながら私は胸を高鳴らせた。


「悪かった。」


がくっと肩がずりおちた。
急に結論を出た。
驚きすぎて次の言葉が出ない。

「えっ・・・あの・・・」
恐らく自分の過去を振り返り、私と同じようにつっぱしっていた時期があったのだろう。
それを理解せず一方的に突き放したことに対して謝りたかったのか。
しかし私にも反省すべき点はある。

「私の方こそ、ごめんなさい」

ローに向いて頭を下げる。
「ローに相談せずに勝手に決めたこと、
反省しています。」

不意にキャップの上から重力がかかる。
見上げるとローが私の頭に手を置いていた。

「早く帰りたい一心で」

特にキャプテン、貴方に会いたくて、

何て今までの私なら言えたかもしれないのに

何故か言葉が喉でつっかえて出てこない。

「・・・そうか。
でもこれからはちゃんと頼れよ」
ローは満足したようにふわりと笑った。
「うん、わかった。」
少しはにかみながらも私も笑い返す。


「買い物しがてら船に戻るか。」
そう言って手を差し出すロー。
ぽかんと口を開けているとローは私の左手を掴んで立たせた。

「・・・仲直りだ。

あと、またどっか行かれるのも困る」

刺青だらけの指が力強く私を掴む。

「―――っはい!」




秋の空は夕焼けが綺麗だ。
オレンジ色に光る海に、東の空からは星が輝きだしていた。



冷たい彼の指が少しでも温かくなるようにと
私はローの手を握り返した。










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