本編 ★deAd ENd★(中編)

□chapter1
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『、、しもし、、、もしもーし?』


「はい、こちら護廷十番隊第4席、射手佐野翔です。」




地獄蝶が翔の肩にヒラヒラと止まる。

先ほどの喧騒から飛び逃げ、祥子は今島の一番高い時計台の鐘の下に居た。
時計台は大通りから離れた山の麓にあり、人気もなければ大通りをうっすら見渡せるところにあった。

『翔ちゃーん!
あたしよあたし、乱菊っっ!!』



「え、ら、乱菊副隊長!?」


翔は意外な人の登場に驚きを隠せなかった。
「どうしたんですか?
てっきり通信技術科の人からの連絡かと思いました。」

『翔ちゃんの声聞きたくて変わってもらったの。
次元違っても地獄蝶繋がってよかったわー』


天真爛漫な声が蝶から発せられる。いつもは乱菊の言動に対して苦笑い多かったが、今のこの一人の状況から彼女の声を聞くと幾ばくか気が楽になった。




『って言うのは建前でー。
ごめん、あたし現世への許可申請出すの忘れてたんだよね。
翔ちゃんが断界に入って違う世界に飛ばされたの、私のせいでもあるんだよね。』


あはは、と笑い事ではない爆弾発言。


『でもよかったわ。拘突に飲まれたら一溜まりもないものね。
ラッキーラッキー!』



・・・・しばく!!!




一時でも乱菊の声癒された自分がバカだったと、怒り狂いそうな感情を・・・
「何してくれとるんですか!!!!」
抑えきれるはずもなく、鐘の下で叫んだせいで声にエコーがかかった。


ごっめーんとまた気の抜けた返事が返って来たため、翔の手は怒りで震え始めた。


「・・・帰ったら覚えとってくださいよ。
今日の夜で間違いないんですよね?」
「ええ、その島の東側にある灯台付近に穿界門開くわ。現世での任務は別で頼んだから翔ちゃんは一旦戻ってきなさい。
そうね、お詫びとして良いお酒でも揃えておくわ・」
酒と聞いていらんとも言えず、翔は少し不満を残したままハイと応えた。


『大丈夫だと思うけど、くれぐれも問題は起こしちゃだめよー』
ギク、と肩に力が入る。
地獄蝶で通信は出来るものの、こちらの霊圧の監視は出来ないようだから気を抜いていた。
先ほど破道を使い色々被害を出してしまった。
バレたら一溜まりもない。



「だ、大丈夫です!
とにかく早くしてくださいね!!」


無理矢理翔は通信を切った。
「ふう・・・
何だか無茶苦茶やな」


翔は尸魂界に住み、現世との調整をはかる死神として護廷十三隊の十番隊に所属している。
今回は現世への調査として行く途中だったが、断界を横断中に急な突風に見舞われ、現世ではない別次元の世界に飛ばされてしまった。
何せ死神が誰も行ったことのない世界だ、穿界門の開門に時間がかかるとのことで一週間ほど異世界の島に一人取り残される始末となった。
占い紛いの霊視で何とか食いつなぎつつ、目立たないようにコソコソと生活をしていた。
それも今日で終わると思うとほっとする。
「ってか、すべての元凶が乱菊さんの申請漏れやたってことが腹立つわ、、、」
翔は舌打ちをする。



「夜までここで待つしかないかぁ」
頬杖をつきながら街を眺めていると、急に背後に気配を感じた。


「・・・誰や?」



男の気配を感じつつ、翔は街を眺めたまま答える。
石造りの床にブーツの音がカツーンと響いた。

「お前こそ何者だ。占い屋。」


「ハッ、私はしがない占い師。
何者も何もあらへん。」

”何やこの男の霊圧。人にしては異常や。
手がびりびりするが、今自分の霊圧をあげてしまうと怪しまれてしまう。
ここはトボけた方がマシやな。。。”



「じゃあ何ださっきの騒動といい、
今のその変な蝶との会話。
”異世界”の電伝虫か何かか?」


ガバッと後ろを振り返る。
「き、聞いてたんか・・・っ!!」


そして初めて男の顔を見た。
長身に長刀を肩に担ぎ、黒いロングコートを着ている。
目元は白いぶちの帽子に隠れて良く分からないが、シャープな顎や薄く伸びる唇から、端正の取れた顔立ちを想像させる。
いや、そんなことはどうでもいい。

”街で暴れたことを見られた上、
この男はさっきの会話も聞いていた・・・?!
そんなわけない。
さっき気配がフッと湧いたんや。


いやでも、それが私に気がつかせる為に発したものだとしたら・・・。

・・・・・相当の手練やな。”




「グランドラインは何が起こってもおかしくねえ。
占い屋が異世界から来たとしても
何ら疑いはねえ。」
すんなり信じた男に内心驚きながらも、
彼の底知れない力に警戒心を解くことができなかった。

「アンタこそ何者や。
コソコソ人の話を盗み聞きおってからに。」



柱に肩をもたせかけながら、男は口を釣り上げた。

「俺はトラファルガー・ロー。
海賊をやっている。」









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やっと名乗ったローさん。
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