本編 ★deAd ENd★(中編)

□chapter5
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グランドライン中に響き渡るのではないかという程の怒号が響いた。

それはつい最近、ハートの海賊団に居候している

可憐、とは程遠い女性。

いや、

死神。



「やる気あんのかコラーーーー!!!!」



ぐったり甲板にへばりついた十数人のクルーたち。

「も、もう勘弁してくださいっ
翔さん。いや、翔姉さまっ」


息絶え絶えのクルーたちに涼しい顔で見下げた翔。

「あほか。
あんたら、今まで何しとってん!」





そもそもの事の発端は昼食後。
翔は甲板に出て潮風をあびてのんびり過ごすつもり、であった。
手すりに腕をもたげて地平線を眺めていると、急に騒がしい足音と扉の開閉。
「「特訓だー!」」
叫び声とともに甲板が騒がしくなった。
最初は真剣にクルーたちがトレーニングをしているのを背後に感じながら翔はぼけっとしていたのだが、ある一言を機に翔の闘争心に火をつけたのだ。




「よぉし、つぎは剣術だー!」



そういってデッキブラシを振り回す。
体術は心得てはいるものの、剣術はたしなんだことのないような男たちばかり。
いつのまにか遊びへと変わり始めていた。


翔の頭の中でブチリという鈍い音が聞こえた。






「剣術をあまくみるな、あほが。」



そうして今の状況に至る。
木刀を振り、近くのクルーの背中を叩く。
「あんたら、船長に頼りすぎや。
もっと力つけなこの先知らんぞ。」
そう自分が言ったことにはっと驚く。

”あれ、何で私この海賊らのこと心配しとんのや・・・・・?”



首を振って、翔の後ろの立っている一人と一匹を指差す。
「ジャンパールやベポを見習え。」
二人は息切れもせず、倒れているクルーたちを見ていた。
「俺剣術苦手だけど、体術なら任せてよ。」
「右に同じく。」
相手のし甲斐がありそうだと、翔は笑いながら木刀で自分の肩を叩いた。



「お、面白いことやってるな。
俺も混ぜてくれ。」


上を見上げると、二階の方からペンギンが会談を降りてきた


「何や。
初日に縛られとった奴が相手か。」
「言うね。
妙な術使ったら翔の負けだからな。」
「ええよ」
鬼道を使うまでもない、と翔は笑った。


「おっけー、じゃあ同じルールね。
先に外に出た方が負け。
それ以外は体術・剣術は何でも大丈夫。」
ベポは紐を輪っかにした直径7メートルほどの円形を作った。

二人とも円の中に入り、体勢を整えた。


ペンギンは両腕を前に持ってきた。
翔は木刀を構える。


「よーい・・・・セット!!」


ピリ、とした緊張感が甲板に漂った。



”お、霊圧があがった。
頼もしいやないか”



先に動いたのは、翔。
瞬歩に近い素早さでペンギンとの間合いを詰める。
ペンギンは翔の斬撃を避けようと右に逸れた。

「っ」
「!」

それも翔は読んでいたようで、すかさず刀身をずらして、ペンギンの腕にクリーンヒットさせた。
鈍い音が甲板に響く。

が、ペンギンも負けてはいない。
木刀が腕にめり込んだと同時に、翔の腕を左手で掴み、そのまま力任せに引っ張った。

「うわっ!」

翔は倒れまいと右足を一歩出そうとしたとき、左足を思いっきり払われて床にたたきつけられた。

バンッ!


「おぉ、翔姉さまが倒されたぞ!」
それは驚きとともに、ペンギンよくやったという応援が含まれていた。

翔が怯んだ隙にペンギンは翔の手首をつかみ、木刀を持っていた握力を弱らせた。
「くっ」
「残念ながら俺も剣術は苦手だ。
体術に持ってかせてもらうぞ。」

ぐっと手首をつかんでいた力を強める。
押し問答が続くかのように思われたが、翔はすんなり木刀を離した。

「!!」

翔は手首を捻りペンギンの腕を引っ掴んだ。
それは速く、しなやかな体の動きで見ているクルーたちはあっという声も出なかった。


バタンッ!!


身体を組み替えているうちにペンギンが背中からすごい音を立てて床に倒れた。
ペンギンの上には馬乗りになった翔。


「っはぁ、はぁ。
やるやんっ。」

「・・・・見事。」


”この海賊団は変な奴だらけたと思ったが
まともな奴がおったな。”

お互い息切れしながら見つめあう。

と、背後に感じた事のある気配がした。



「島に着いたら呼びにくると言ってたが、
何をやっているペンギン」
あ、という声と共にペンギンが船首に目を向けると島がもうすぐそこに見えていた。
「占い屋、お前は誰でも彼でも押し倒すのか。」
ペンギンの腹の上で固まっていた翔の二の腕を掴んで無理やり立たせる。
「人聞きの悪いこと言うなっ。
アンタの仲間に剣術教えとっただけや。」

それをさも不満そうな目で睨まれる。
「・・・・まあいい。
お前何か服持ってるのか?」
「現世の服なら」
ローは現世?と怪訝な表情をした。
現世へ調査へ行くため、最低限の必需品は荷物として持ってきていた。
「あんたらが着ているような洋服や。
やが洋服は好かん。黒いこの死覇装が私には似合っとる。」

乱菊に、義骸の時しかお洒落な格好出来ないからと、いろいろ持たせられそうになったがすべて断った。
義骸に入ってまで死覇装を着ようとする翔を隊員皆呆れ顔で見送ったのだった。

「お前のワノクニみたいな服装は嫌でも目立つ。
ツナギを着ろとは言わないが、それなりの格好をしろ。」
「翔、船長の言うとおりだ。
お前は騒動を起こす。次の島はあまり治安が良くないんだ。服だけでも大人しくしてくれ。」
ペンギンが口を開く。
「服だけでも大人しくって、どんだけ信用されてないねんっ。」
と、言いつつも自分にも思い当たる節があるので、しゃあないわ、と口を尖らせて部屋に戻った。




”確かに、目の前の島、不穏な雰囲気がするからな。
島を見がてら様子探るか。”



島はどんより黒い霊気が漂っていた。
翔は皆に背を向けながら、少し目を細めて真剣な顔をした。









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居候兼、トレーナーとして。
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