小説

□変態さんが通る
1ページ/2ページ

「ぎゃああぁっ」
党内に響く悲鳴に、リヴァイは跳ねるように布団から飛び出し、地下にいるはずのエレンのもとへと、飛び出した。
何事だろうか。
まさか、暗殺の刺客でもきたのか?
パジャマ姿に、帽子まで被ったマヌケな姿で速度だけは最速に、部屋へと向かう。
「あ、兵長、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
途中、前方にリヴァイより部屋が近いペトラに会う。
「何事だ?」
「わかりません。侵入者らしいものは感知しませんでしたが」
ダサいパジャマでも、寝巻き姿にほんのり頬が赤いペトラ。
「そうか、先いくぞ」
そんなペトラの様子に気づく訳もなく、リヴァイは前を見て、走りさって行った。
彼の中にエレン以外は視界に入らないのだ。
人類最強は、その能力を駆使し、いち早くエレンの元へとたどり着いた。
「エレン、どうした?何があった?」
バタァンとすさまじい音を立てながら、扉を開く。
するとそこには、布団にくるまるエレンの姿。
不審者などの姿はない。
エレンは怪我などもしていないようだし、見たところ、変わった部分などは…、ん?
「エレン、大丈夫か?」
なんとなく、違和感を感じつつも、リヴァイはエレンの元へと近付く。
「ああぁ、兵長。大丈夫です。大丈夫だから、近づかないで」
涙目になりながら、両手で、リヴァイを拒絶する。
その反応に、少なからず、不機嫌そうに眉を寄せるリヴァイ。
「なんだ?テメェの悲鳴をきいて駆けつけた者に対する態度がそれか」
ヤバイ。怒らせた、かも。
背中に冷や汗が伝うのを感じつつ、いやでも、それ以上近づかないでほしい。
エレンは、怖くてこれ以上拒絶の言葉を口にすることができず、(いや、ダサいパジャマのおかげで威力は半減してるけれども)己の前に小さく壁を作るだけ。
かまわず、歩み寄ってくるリヴァイ。
距離にしておよそ数十センチ。
「エレン、言え。何があった?」
「え?いやぁ、その…」
リヴァイの問いに口ごもるエレン。
てか、気づかないものなのだろうか。こんな至近距離にいて。
自分でもまだ状況がわかってないんだけど。
エレンはどうしたものかと瞳を泳がせている。
すりと、イライラMAXな男は舌打ちをし、目の前にある小さな手の壁を払い、その胸に手を伸ばす。
言えないなら、身体に聞いてやる。
ふに。
「あんっ」
ん?
今のはエレンから出た声か?
この手の感触は?
ふにふにふにふにふに。
「あっ、あんっ、ちょっ…、兵長、やめてくださいっ…」
真っ赤になりながら抵抗するエレン。
その力は弱く、まるで…。
バッと、身体をくるむシーツをはずす。
すると、あるはずのものがなくなっており、胸にふくよかな膨らみがある。
ゴツゴツとしか筋肉の代わりに、なめらかな肌をしていて
「エレン?お前、女だったのか?」
「なわけないじゃないですかっ。兵長が1番よく知ってるでしょう?」
呆然とするリヴァイに、エレンは悲鳴のように叫ぶ。
その顔は真っ赤だった。
まぁ、確かに。エレンの身体のことなら本人より1番知ってる自信はあるが。
目の前のエレンはリヴァイの知ってるそれとは違う。
「きゃあああぁっ、エレンっ。なんて姿をしているの?」
入り口にペトラが立っていて、ム◯クの叫びのようなポーズでいた。
かと思うと、リヴァイからシーツを奪い取るとエレンの身体に巻きつける。
巻きつけすぎてまるでミノムシのようになって、エレンは動けなくなっているが、そんなこと気にしない。
「エレン、大丈夫よ。もう怖くないから」
リヴァイに対する尊敬はどこへやら。
目の前の変態から、エレンを守ることに母性本能が目覚めたらしいペトラ。
まぁ、確かに目の前で女の子が裸で、ダサいパジャマ姿の男に胸を鷲掴みにされて涙目になっていたら無理もないのかもしれない。
「これはどういうことだ?エレンよ。お前、巨人だけでなく、女にもなれたのか?」
リヴァイは、サンタのような帽子をユラユラさせて、パジャマ姿のまま腕組みをする。
「わかりません…。俺、初めてで、どうしたらいいのか…」
ぐすっ、と鼻を鳴らし、ミノムシで身動きが取れないまま、リヴァイを見上げるエレン。
その瞳は計算なのか。
クラクラしながら、やべぇ、キスしてぇなとエレンに吸い寄せられるように近付くリヴァイ。
それを寸前にペトラに阻止される。
リヴァイはちっ、と舌打ちをした。
「兵長、私、エレンをハンジさんのところへ連れて行きます」
いうが早い、ミノムシのエレンを担ぎ上げた。
「え?うそ」
ひょいっと軽々持ち上げられ、驚くエレン。
さすが兵士だけあって、鍛えているに違いない。
リヴァイから何か言われるより先に、部屋から出て行った。
「何事だ?」
「今、ペトラが血相変えてでてったけど」
顔を出したのはエルドとグンタだ。
オルオはここにはいないが、おそらく、廊下で舌を噛んで倒れているにちがいない。
「…さぁな」
リヴァイはまだ把握し切れていない現状を部下に説明することはできなかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ