小説

□輪廻
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ゴーン、ゴーンっ。
鐘が、鳴る。
「リヴァイ、時間だ」
「わかっている」
声をかけられ、閉じていた瞳を開き、立ち上がる。
階段を登り、外に出ると、眩しい太陽が照りつけていた。
目の前には、鎖につながれた、エレンの姿。
いつか見た時と同じ、柱に繋がれ後ろ手に手錠。
うつむいていたエレンは、顔を上げる。
リヴァイを視界に納めると、エレンは微笑んだ。


「ふざけるな」
低く、ドスのきいた声で、リヴァイは机を叩いた。
「上からの命令だ。…エレンを、処刑せよ、と。」
エルヴィンは表情ひとつ変えず、言い放つ。
リヴァイはその言葉に、舌打ちをする。
「あの、豚野郎」
ギリッと、歯を食いしばる。
リヴァイは、立体起動装置を手に部屋を出て行こうとする。
「残念だが、上を脅しても無駄だ。これは、民意でもある」
だんっ、
エルヴィンはリヴァイの手により、壁際に追い詰められていた。
ぬらりと光る刃は首元にある。
わかっている。エルヴィンを責めたところでどうしようもないことなど。
「だったら、どうしろっていうんだ。あいつが死ぬのを指をくわえて見てろっていうのか」
巨人はすべて駆逐した。
数々の兵士の命を犠牲にしながら、死にそうになりながら、生き残り、人類は勝利したはずだ。
なのに、今度は守ろうとしたはずの人類に、エレンは殺されるのか。
「お前が、殺すんだ。リヴァイ」
うなだれる、リヴァイにエルヴィンは容赦無く言った。
今度こそ、リヴァイの拳がエルヴィンの頬に入った。
「……断る」
リヴァイは、静かに言い放ち、エルヴィンに背を向ける。
「お前が殺さなければ、他の奴に殺されるんだ。
エレンは、簡単には死なない。
嬲り殺しにされるだろう」
エルヴィンの言葉に、リヴァイは立ち止まる。
瞳が、揺れる。
「逃げるならにげろ。エレンがそれを望むなら」
リヴァイはエルヴィンから、目をそらした。
そして、部屋を後にした。

「あ、おかえりなさい。リヴァイさん」
リヴァイが、古城へ戻ると、玄関で待ち伏せしていたのだろうか。
エレンがキラキラした表情で、出迎えた。
リヴァイは、そんなエレンを引き寄せ、抱きしめた。
「兵長?どうかしたんですか?」
リヴァイはエレンのその質問には答えず、エレンの唇を指でなぞり、口付ける。
徐々に深くなる口付け。
エレンの口内に舌を侵入させ、犯す。
「…んんっ…あ、…へいちょ…」
快楽に、足に力が入らなくなるエレンの腰をだき、シッカリと支える。
潤んだ瞳が、リヴァイを見上げる。
リヴァイは、エレンを抱き上げるとベッドルームへと、運んだ。
トサっと、優しくベッドへエレンを寝かせると、唇から首筋へ、滑らかに唇を滑らせる。
まるで、存在を確認するように。
優しく、愛おしむ。
「あっ、兵長。ちょっとまっ…」
伸ばされたエレンの手は、たやすくリヴァイに捕まり、頭の上でひとつに縫い止められてしまう。
「あっ、あぁ…」
何かあったんだ。
リヴァイの熱を感じながら、エレンはボンヤリと考えていた。
しかし、考える思考は快楽に奪われていく。
慣らすようにいれられた指が、エレンを攻める。
「あっ…兵長、兵長が、欲しいですっ」
指じゃ、足りない。
疼く身体。
リヴァイは、指を引き抜くと望み通り、己のものをあてがい、エレンを貫いた。

「エレン、何処か行きたいところはあるか?」
情事のあとも、リヴァイはエレンを離さない。
後ろから抱きすくめたまま、耳元で囁く。
「兵長、…何か、あったんですね。」
リヴァイの質問には答えず、エレンはクルリと身をひねり、向かい合わせになる。
「何故、そう思う?」
「だって、兵長らしくない」
そういう、エレンの中にはまだリヴァイのものが残っている。
いつもなら、すぐに洗い流す。
いや、それ以前に、帰ってきて情事に及んだのは今回が初めてだ。
求めるような視線。
リヴァイは重い口をひらく。
「…上から、お前の、処刑命令がでた」
この言葉に、エレンは驚いたように目を見開いた。
しかし、すぐに納得したように目を伏せる。
「エレン…」
「兵長、俺を殺すのは、兵長ですか」
見上げるられた瞳。
リヴァイ何か言おうとして、やめた。
でたのはたった一言。
「そうだ」
「……そうですか」
エレンは頷くと、リヴァイの腕の中から出る。
「風呂に、入ってきますね」
笑顔でそういうと、エレンはリヴァイの視界から、消えた。


「エレン、何か最後に言うことはあるか」
鈍く光る刃物を手に、リヴァイは問う。
エレンは死ぬ間際とは思えぬほど、瞳に強い光を宿す。
「生きて、くださいね」
そう、最後の言葉を残し、エレンは逝った。
力なく、首が落ちる。
飛び散った返り血が、生暖かかった。

巨人と共に戦った2人。
1人は英雄。1人は化け物。

化け物を英雄が葬ったと喜ぶ民衆が歓声をあげる。
リヴァイの手に、エレンを斬った感触が残っていた。
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