小説

□変態さんが通る
2ページ/2ページ

「すごいよー。完全に女のコじゃん。巨人化して女形になるか実験してもいいっ!?、フガッ」
「ダメに決まってるだろう」
とりあえず、ハンジにグーパン食らわせつつ、リヴァイは言った。
巨人化などとんでもない。
巨人化するということは、服を纏わないということだ。男形でもできれば嫌なのに、女形など論外だ。
それがたとえ皮膚を纏わず、筋肉の細胞むき出しの姿であろうとも。
リヴァイは心の中で呟く。
「痛いなぁ。殴る事ないでしょ」
ハンジはメガネに若干ヒビが入っている。
「エレンの健康には影響ないんですか?ハンジ分隊長」
ペトラはミノムシエレンにぴったりとよりそっている。
「とりあえず、健康に問題はないよ。問題は、どうしてこうなったかだけど、エレン、何か思い当たることある?」
巨人化実験ができないとなると、少しテンションが下がるようだ。
ハンジは冷静にエレンに語りかける。
「心辺り…、ですか?」
「うん。巨人にも目的があって初めてなれるんだから、女性化したのも何か目的があって、なったんじゃないかな?」
ハンジの言葉に、エレンはうーんと唸ったあと、あ、と声を上げた。
しかし、顔を真っ赤にして、ちらっとリヴァイを見上げながら、なかなか言葉にしようとはしない。
「なんだ?俺がいると言えないことか?」
おもしろくない。
不機嫌さをかき消そうともせず、リヴァイは言う。
「いえ、あの…、そういうわけでは…」
「大丈夫よ、エレン。私がついてるわ」
「う…あの、じ、じゃあ」
ペトラに促され、エレンは意を決したようだ。
まっすぐにリヴァイを見つめた。
エレンはゴクリと喉を鳴らす。どうやら緊張しているようだ。
リヴァイは眉を寄せて、首を傾げながらエレンの言葉を待った。
「俺、子供が産みたいと思いました」
「………は?」
「あのっ、だから、兵長の子供が産みたくて、俺が女だったらよかったのにって思っ…」
「エレン」
リヴァイはエレンの手を取り、はーっと息を吐いた。
怒らせたかな。気持ち悪いとか、思ったかな。
怯えたような表情のエレン。
その潤んだ瞳は計算か。あざといぞ、エレン。
「エレン、結婚し…」
「エレンが女のコになったってホントなの!?」
パァンっと勢いよく窓ガラスが割れて、立体起動装置を着けたミカサが乱入してきた。
よくみると、◯ンクの叫びのポーズになっていて、あれ?数時間前にも同じ光景を目にした気がする。
あれか、デジャヴというやつか。
ミカサは風の勢いでエレンに近づく。
そしてエレンの抵抗する暇なく、胸に触れ、股間に触れる。
「ちょっ、ヤメろ。ミカサ」
「胸はない。でも、下もない」
「どこ触ってんだよ!!」
真っ赤になって、逃げるエレン。
ヒュッという音がして、気付くとミカサが離れていた。
どうやらリヴァイの足を避けたようだ。
リヴァイはちっと、舌打ちする。
「おい女。テメェひとのもん勝手に触んじゃねぇ。そして人のプロポーズの邪魔すんな」
「エレンは物じゃない。プロポーズなんて、させない」
スラリといつの間にか抜きはなった、巨人の肉を削ぎ落とすための武器を構えるミカサ。
「エレンが貴方の子供を産むために女になったというなら、出来なくなれば元に戻る」
「できるもんならやってみろ。相手してやる」
ナニを削ぐつもりだ。ミカサ。
リヴァイも負けじと対峙する。
「ちょっと2人ともヤメろって」
どうして2人とも会うと喧嘩ばかりなんだ。
アルミンはどうした?一人で2人は対処しきれない。
「ミカサ。やめなよ」
息を切らしながら扉から入ってきたのは、エレンが待ち望んだアルミンだ。
「アルミンっ!!」
待ち望んだせいか、めいいっぱいの笑顔を見せるエレン。
その様子に、1人の男が負のオーラを募らせる。
「ミカサ。これはエレンが望んだことなんだ。僕達がどうこう言える問題じゃない」
アルミンはミカサに説得を試みる。
一時しのぎくらいにはなる。
アルミンは目配せで、エレンに逃げろと合図を送った。
「俺の子を孕みたいと言ったそばから浮気とはいい度胸だな。エレンよ?」
アルミンに頷いたあと、ドス黒い殺気を背後に感じて、エレンの背筋が凍る。
そもそも浮気ってなんのことだ。
さっぱりわからない。振り向きたくない。だが、このまま逃げるのはもっとヤバイ。
は、ペトラさん。
自分をこの場に連れてきたペトラに視線を向ける。
が、ダメらしい。
本気モードのリヴァイに逆らうには、尊敬心が強すぎるようだ。
「エレン、俺の部屋に行くぞ」
もはやエレンの返事など聞く気はない。
腰をつかんで耳元で甘く囁くと、ズルズルと部屋の扉に向かって引きずられていく。
あ、ハンジさんは?
彼女ならきっと、リヴァイ兵長を抑えられ…。
無理だった。
ひらひらと手だけて見送り、大爆笑で、床をたたいている。
エレンははぁとため息をついて、隣にいるリヴァイに視線を向ける。
女になったことで縮んだ身長が、リヴァイを見上げる形にさせていた。
「リヴァイ兵長、優しくしてくださいね」
爆弾投下もいいところだ。
エレンから目線攻撃と甘い誘惑のダブルパンチにさすがのリヴァイも股間がビンビンだ。
「当たり前だ」
クソ可愛い。俺の嫁。
「結婚しよ」
エレンの額にキスをして、リヴァイはさらっと愛の告白をしたのだった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ