短編小説
□大好き
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暇だ。
ここ数日、銀時は土方と会っていない。それは、仕方の無い事だと分かってはいる。
相手は日夜忙しい真選組の副長様だ。ただでさえ、仕事の鬼だと言うのに、ここ数日は、それに輪を掛けるように忙しいようなのだ。
会える時間など無いに等しい。
「…一応、俺らって、付き合ってんだよなぁ?」
余りの放置具合に、銀時はふっと独り言を漏らしていた。
そう、銀時と土方は、所謂恋人同士なのだ。世間には、決して言えやしないが。
それ故、この会えない時間が酷く寂しくて仕方が無い。
こんな時、決まって考える時がある。
こんなに好きなのは、自分だけなんじゃないかと。土方は、自分に流されているだけなんじゃないかと。
そんな事はないと思いたいが…、こんだけ放置されてしまうと、不安に駆られてしまうのも事実で…。
「…クソっ、俺らしくねェ!」
髪をぐしゃぐしゃと掻きながら、嫌な考えを振り払う。
ここで、一人でいても何もいい事なんてないと思うと、立ち上がり万事屋をあとにした。
別に、行くあてなどないのだが。
それでも、一人で悶々としているより、何倍もいい気がした。
もしかしたら、何処かで土方と会えるかも知れない。と、淡い期待なんかもある。