桜ノ散ル前ニ
□1*落ちた先はホグワーツ
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『うっ…ぐすっ…』
私はある本を読みながら号泣していた。
全七作からなるシリーズの七巻下…最後の本である。
この本で私の大好きな人…セブルス・スネイプが死んでしまったのだ。
たかが本の登場人物へここまで感情移入してしまったのは初めてである。
『ハリーの世界だと死んだらゴーストか亡者になるのかしら?
ハリーのパパやママはほとんど首なしニックのように現れることはできないの?
とりあえず日本は成仏するか未練があってさ迷うかのどちらかね…
あ、そーいえば今夜も悪霊退治の仕事入ってたっけ?』
私の家は代々陰陽師の家系である。
そのせいか魔法とか魔術が好きで西洋東洋様々な魔術の本を読むのが好きだった。
そんな本達を読み漁っているうちに見つけたのがハリー・ポッターというシリーズの本。
読み始めは杖一つと短い言葉だけで魔法が使えるなんてなんて簡単だろうと羨ましく思っていた。
日本で魔術を使うときはお札や魔鏡など何かと道具が必要だし何よりも呪文が地味に長いから時間もかかる。
まぁ霊力…魔力?が強ければハリーの世界で言う無言呪文のような物を使える。
私の家は代々霊力が強い人ばかりだったからもれなく私も念じるだけで物を動かしたり傷を治したりできる。
『ハリーの世界にいけたらなぁ…
死人がでる前に私が助けてあげるのになぁ…』
つぶやいてから自分でも納得した。
私ならどんな場面で誰が死んでしまうか分かるからもしハリーの世界に行けたら助けられるのだ。
まぁどーせフィクションの世界だし…
妄想を広げるだけ無駄か。
私は夜の悪霊退治にそなえて魔具を整備するために蔵へ行くことにした。
あ、そうそう。ハリーの世界は私達陰陽師には不便なことがあった。
ハリーの世界では蛇と話せると色々とやっかいだけど私の家では蛇…というか動物と話せないと死活問題に繋がってしまう。
空から見回りをして異常があったら知らせてくれる烏や鷹…
人間では入れないような狭い隙間に入って中を調べてくれる猫や鼠…
動物と話せないと…まぁ式神を使う手もあるが所詮紙が変化したものだから式札を引き裂かれてしまえば終わり…つまり頼りないのである。
この間兜を着てすごく強そうな式神らを作ったのに猫に式札を破られてあっけなく消えてしまった。
そんなことを考えながら私は早足で蔵へ向かった。