東巻2

□面倒くさい男
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 行ってこい、イギリス。






 とは言ったものの。






 巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん巻ちゃん






 巻ちゃん、お前に会いたいよ。






「あぁ―――っ、ウッゼ。 おい、東堂、お前、あんだけカッコつけて巻ちゃんの事、見送ってたじゃないか」
「荒北」
「そんなに巻ちゃんの事が好きならいっそ押し倒せば良いんじゃナァイ」
「馬……っ鹿、俺の辞書に押し倒すと言う、疚しい文字はない。 そう、俺と巻ちゃんは、誰も踏み込めない山の頂の様に清らかな関係なんだぞ。 それを荒北お前は―――」
「はっ、そうかよ。 じゃあ、イギリスに行ってみるとか、兎に角、リアクション起こせよ」
「そうだな」
 俺は、はははと力なく笑った。
 巻ちゃんが、否、巻島が実家の都合で渡英して未だ間もない。
 俺は、巻島がイギリスに行くと知ってかなり落ち込んだ。 それは、永久の別れであるかの様に思われたからだ。 だが、俺に巻島の人生を干渉する資格はない事も判っていた。
「あぁー、オレ、ノイローゼになりそう」
 荒北は、頭が痛いとばかりにこめかみを押さえる。
「話を聞いてくれてありがとう、荒北」
「礼ならいらねぇよ、キモイから」
 何だかんだ荒北は俺の愚痴を親身になって聞いてくれる。 ありがたい事に。
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