交想曲(短編)

□チェンジ‼(赤降、緑高)
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「……ろ、……きろ、よ」
「……ん…」
誰かを呼ぶ必死な声を聞いて、オレは目を開けた。少し痛む頭を押さえながら上半身を起こし、声がした方を見ると、茶髪の少年がオレを心配そうに覗き込んでいた。
「お前は……」
「よかった…呼んでも起きないから心配した……」
オレが起きたのを見て、茶髪の少年の顔は安堵の色を浮かべる。
見覚えのあるその温厚な顔の少年の名前が脳内に浮かんだ。
降旗光樹。
黒子達の通う誠凛高校のバスケ部員で、ビビリなところが特徴的であるどこにでもいる様な平凡な少年だ。
そして、オレの幼馴染の赤司征十郎の恋人でもある。
オレは疑問を感じた。
(何故、こいつがここにいるのだよ……?)
オレはさっきまで恋人の高尾を追いかけてたはずだ。なのに、何故ここに降旗光樹がいるのかが分からない。
「えっと…どうしたの?」
茶髪の少年、降旗がオレを見てそう言った。どうやら、オレは自分が思ってる以上にそのことを考え込んでいたらしい。
「……なんでもないのだよ」
とりあえず、そう言葉を返す。
すると、それを聞いた降旗は目を見開いてオレを見つめた。
「………」
「?なんなのだよ?」
そんな目で見つめられるとは思っていなかったので、とりあえず理由を聞こうともう一度声をかける。
すると、思いもよらなかった言葉を返された。
「……えっと…頭でも打った?」
躊躇いながら返された降旗の言葉にオレは一瞬頭の中が真っ白になった。
「………は?」
しばらくして、我に帰ったオレの口から出た言葉は自分でも間の抜けたものだった。
「あ、ご、ごめんなさいっ‼えっと…その……」
オレの言葉に降旗は怯えたような目を向ける。
「だって…赤司が、なのだよ…って使うなんてあり得ないから…」
「………」
オレは耳を疑った。
今こいつはオレをなんと呼んだ?
「おい、今の言葉をもう一度言うのだよ」
「え?えっと…あり得ない、だけど……」
「違うのだよ‼その前の言葉なのだよ‼」
降旗はオレの言葉にビクつきながらもその名前を発した。
「え、えっと…〈赤司〉がなのだよって使うなんて……だけど…」
やはり、聞き間違いではなかった。こいつはオレを、緑間真太郎を赤司と呼んだのだ。
(これは、どういうことなのだよ…)
この事に関しての答えはおそらく二つ。
一つは降旗光樹がオレをからかっている。
(だが……それは、あり得んのだよ)
オレはすぐさま頭の中に浮かんだ一つ目の可能性を否定した。
ビビリなことで知られている降旗光樹がオレをからかうなどあり得ない。
なら、もう一つの可能性しかない。
今現在、オレの予想を超える出来事が起きているという可能性だ。
(本当に…今日は厄日なのだよ……)
降旗に不思議そうに見つめられながら、オレは心の中でため息をついた…。
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