外殻大地編

□第1話『聖なる焔と白髪の放浪者』
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ガタゴトと歪な音が車輪から上がり、その音に紛れて、時折馬の嘶きが耳に響く。

俺の名前はルーク・フォン・ファブレ。

キムラスカ王族の傍系、首都バチカルに拠を構える公爵貴族、ファブレ家が嫡男だ。本来なら屋敷に軟禁されている筈の俺は、今現在走行中の馬車の中にいる。
何でこんな所に居るのかと言えば隣に座っているこの女、ティアとか名乗る奴のせいだ。
こいつはある日、唐突に人様の屋敷に潜り込んで来たかと思えば、事もあろうに俺の剣の師匠(センセイ)、ヴァン・グランツに刃を向けて襲いかかってきたのだ。
その時のいざこざで俺は訳わかんねー内にこの女と共に飛ばされてしまい、気が付けば屋敷の外にいた、という話になる。
軟禁とか飛ばされてとかはめんどくせぇし訳分かんねーからはぶくぞ。

そんな俺は馬車に備えられている窓から外を眺めていた。眼前にはどこまでも続いた草原が広がっている。屋敷の中ではこんな風景は絶対に見られない、こんな景色が見れたんだから外に出た事もそんな悪い話じゃないかな、とか思っていたい所だ。

だが今の俺は物凄くイライラしている。外に飛ばされたとか女がウルせぇとか馬車が汚いからとかそんなんじゃない。
いやそれらも十分気になってるがまぁ我慢出来る、帰る為には仕方がないからな。


問題は目の前の白髪(しらが)野郎だ。


さっきから異様なまでに俺にガン足れてきやがって、うぜぇっつーの。

……流石にこいつの説明は必要か?

イラつく奴でも訳分かんねーと気持ちわりーしな。
なら、知っとかねーといけねーか。
このムカつくだけの放浪者と出くわした場所は何だったっけ?
確かあそこは……一番最初に見た外の世界、タタル渓谷。

時刻は……そう………

夜明けの頃だったか…………



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