記念小説

□夏休みに最高の思い出を
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夏休み下旬、俺は人生初、恋人をデートに誘おうと決意した。




夏休みに最高の思い出を








――とある昼下がり、今立っている場所、並盛中の正門前で俺は足を止めた。

額から頬に、そして顎、首筋と、空から照りつける太陽と地面からの熱気の熱で汗が溢れてはだらだらと垂れる。
その汗を右腕で拭った。
しかし汗は止まらない。
Tシャツがしっとりと濡れているのが自分でも分かるくらいだ。


(よし、)


小さく拳を握りしめて、逸る鼓動を鎮め、気合いを入れた。
そして足を敷地内へといれた。






 夏休み、と言っても部活動はあるらしく、この炎天下野球部員が校庭を走っていたり、サッカー部員が練習をしていたり、素直に凄いと思う。


(あ、山本だ。)


走っている野球部員に目が行って、そこには真剣に部活動に取り組む山本の姿があった。
手を振ろうかと思ったが、今の俺の姿を思い出して手を止めた。
今の俺は男に変装をしていない、素のまんま。
ウィッグも被らず、長い髪の毛を二つに纏めて、Tシャツにショートパンツにサンダルという女の格好だ。

俺はまだ秘密にしている。秘密にする必要があるから。
それは今度語るとして、
俺は小さく、頑張れ山本、と囁き応援して、校舎に入って行った。


そしてついたのは今日の目的である彼のいる、応接室。
俺はノックをして、扉を開けた。


「こんにちは、」


そう挨拶すれば、彼――雲雀さんがこちらに振り向いた。


「綱吉…、どうしたんだい?しかもそんな格好で。」


バレちゃいけないんだろう、と雲雀さんは椅子から立ち上がり、俺の前まで近づく。
俺は扉を閉めて、雲雀さんを目の前に一つ深呼吸。
そして真剣な眼差しで雲雀さんを見つめて言った。


「雲雀さん、明日のお祭り、一緒に行きませんかっ!」


(言えた、ちょっと声が震えたけど言えたっ)


今日応接室に来たの目的、それは並盛の夏祭りへの、つまりデートのお誘いだ。


「…………」


(あれ?)


そう言った瞬間、雲雀さんが止まった。
そして沈黙。
あれ、まずった?と不安に思えば、一つの大きな溜め息。


「…綱吉、」


「あ、はい…。」


雲雀さんは俺の髪の毛に触れながら言う。


「僕から誘おうと思ってたのに、やられた。」


そうして俺の髪の毛に唇を寄せる。


 
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