記念小説

□寒空エクスタシー
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――もう冬が、やってきた。






寒空エクスタシー









 10月から11月に変わってから、この並盛りも随分と寒くなったと思う。
朝は鳥肌が立つほどの冷え込みで、無意識にブレザーのポケットに手を突っ込んでることもしばしば。
冬、だ。もう冬がやってきたのだ。
ついこの間まで秋だと思い込んでいたが、こうも急激に温度が下がると、流石にもう冬なんだな、と認識してしまう。

はぁ、と息を吐いてみる。
微かに白く曇り、ふわりと消えた。
寒い時期になると一度はやりたくなる行動の一つ。冬の楽しみでもある。
微かに白くなった息に、少しだけ嬉しさを感じながらも、今日こそは遅刻しないようにと、遅刻常習犯の沢田綱吉は足を少し速めた。

少し歩けば並盛中の生徒がちらほらと見えてきた。
今日は遅刻せずにすむな、と綱吉はホッと息を吐き、登校中の生徒の最後尾を歩く。
途中、獄寺や山本と合流して、たわいのない話をしながら学校へ足を運んだ。

 学校に着き、校門に一歩足を踏み入れれば風紀委員が取り締まりをしていた。
リーゼントに学ラン、風紀の腕章。
何年前の格好だよ、と突っ込んだのは遥か昔の事で、今はただの恐怖でしかない。

一度足を止めて、自分の服装をチェックする。
よし、大丈夫だ。と確認をして、綱吉は緊張した面持ちながらも風紀委員の前を通る。
教室について、窓から外を見れば、まだ取り締まっているリーゼントに学ランの風紀委員。
寒くないのかな、と思いながら見ていた綱吉は、視界の隅にいる、風紀委員長――雲雀恭弥に視線を移した。
肩に学ランをかけ、退屈そうに欠伸をしている雲雀を、じいっと、見つめていれば、視線に気がついたのか雲雀が振り返る。

パチリと視線が合った。


「…………っ」


一瞬、ドキリと胸が跳ねた。が、綱吉は気恥ずかしくなり、そっぽを向く。
雲雀はそんな綱吉を見て口元を少し緩めた。
綱吉は火照る頬をひんやりと冷たい机に擦り付け、定まらぬ目線で黒板を見やる。
その際に山本や獄寺に、どうしたのかと心配されたが、綱吉は「何でもない」と小さく呟き瞳を閉じて机に突っ伏した。




 
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