記念小説

□シュガー×シュガー
1ページ/3ページ





それは、甘い甘い、とろけるような
くちづけ






シュガー×シュガー








 ぱくり、一粒口内に放り込めば、甘い甘い砂糖の甘さが溶け、噛み砕けば口全体に甘さが広がり、それだけで幸せな気持ちにしてくれる。
そんなことを家庭教師様に言ったら、「安い奴だな」とか鼻で笑われたけれど、自分としてはまあ事実なのだからと笑って過ごしたのを覚えている。


「…うわ……」


満面の笑みで頬に角砂糖を詰めていたら、前方から声が。
どうやら雲雀がボリボリと角砂糖を食べている綱吉を見てドン引きしたのだろう。その眉は顰められていて、あからさまに、うわぁ、と顔を青くしている。
綱吉は首を傾げて、どうしたんですか?と聞けば、雲雀は手元の紅茶をぐいっと一気に体に流し込んだ。


「……ありえない」

「なにがですか?」

「角砂糖をそのまま食べるだなんて…」

 
未だにボリボリと口を動かす綱吉に、雲雀はこれ以上見るまいと顔を背けるが、聴覚を辿って音が耳に届く。


「えー、何がいけないんですかー。紅茶に溶かすよりこうして食べた方が美味しいですよ」


雲雀さんも一つどうですか?なんて勧めてくる綱吉に、雲雀は嫌がりつつも渋々口を開けた。が、角砂糖が口に入って来た瞬間鳥肌がたった。
甘い、一言で言うと本当に甘い。
噛み砕くなんてとんでもない、口の中で溶けていくのを感じれば感じるほど甘さが口の中に広がり、むせかえりそうだ。


「どうですか?」

「………甘い」

「そりゃ砂糖ですもん」


ふにゃりと笑う綱吉は角砂糖を一つ摘み、雲雀に向かって、あーん、とまた勧める。
その光景は実に可愛らしいが、雲雀は口にまだ残っていると、口の中の角砂糖をもごもごと動かす。


「雲雀さん、もしかして甘いもの…苦手?」

「甘過ぎるのは嫌いだね」


一向に減っていかない角砂糖をパキリと噛み砕き、即座に紅茶で流し込む。
綱吉を見れば、雲雀に勧めていた角砂糖を自分の口に運び音を立てて口を動かしていた。


「君は良く平気だね」

「甘いものは大好きですから」




 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ