記念小説

□わがままな手
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 手を繋ぐくらい、いいじゃない。





 わがままな手







 キーンコーンと授業終了のベルが鳴る。教室にいる生徒達は昼食の準備や各移動を始める。
その中で沢田綱吉は一人机に突っ伏していた。
今日に限って山本は風邪で休み、獄寺はダイナマイトを仕入れにとイタリアに行っている。
今日は一人で昼食か、といつもは屋上に行く綱吉だが、二人がいないのなら意味が無いと、いそいそとお弁当を机に広げた。

いや、本当はもう一人いるのだ。
むしろ最近綱吉はその人物と一緒に昼食をとることの方が多い。
ただ、今は会いたくないと避けていた。

綱吉は少し沈んだ表情で、ぱくりとおかずを口に運んだ。



「――沢田綱吉はいる?」


がやがやと騒がしい教室が、突然やってきたその人物の声に一瞬で凍りつき、しんと静まり返った。
コツリと靴を鳴らし、学ラン靡かせやってきた人物――雲雀恭弥は随分と苛ついた様子でやってきた。教室の生徒達は皆蒼白な表情をしながら雲雀との距離を取る。
その中でただ一人、平然と雲雀を見つめる人間がいた。そう、ダメツナとして有名な沢田綱吉だ。


「………」


今一番会いたくない人物に会ってしまった、と綱吉は内心舌打ちをした。
雲雀が苛ついている原因を知っている。それは自分だ。
しかし謝りたくは無かった。だって自分は悪いことはしていないのだから。


「…何か用ですか?」


つん、と無愛想に応えると、雲雀は綱吉の目の前に来てトンファーの先端でくいっと綱吉の顎を持ち上げる。


「随分と生意気な事言うね、そんなに咬み殺されたいの」

「……やれるならどうぞ」


刹那に目の前の机が真っ二つに粉砕して、綱吉の頭目掛けてトンファーが振り下ろされた。
教室にいる生徒達がもう駄目だと小さく悲鳴を上げた瞬間、パシッとそのトンファーを受け止めた。
綱吉の額にはオレンジ色の炎が揺らめく。

えっ?とどよめく教室。目の前で起こっていることについて行けず、皆困惑していた。


「…やるじゃないか」


至極嬉しそうに笑う雲雀はトンファーを手離して、トンファーを受け止めた綱吉の手を取る。


「………っ」


だかしかし、綱吉はパシッと手を振り払った。
そんな綱吉をくつりと笑う雲雀に、綱吉は顔を赤くする。
後ずさる綱吉を壁へ追い詰め、再度トンファーで顎を持ち上げる。


「どうしてそんなに嫌がるの、いくら僕でもそろそろ怒るよ」

「それはお互い様でしょう」


死ぬ気の炎を解いて、綱吉は少し睨みながら雲雀を見上げた。



 
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