長編

□愛しき君よ
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――――
――


いつもの昼寝の時間、屋上で昼寝をしようと屋上の扉を開けたら、羽根を見つけた。
足元に落ちてある一枚の羽根は、それは本当に白い、純白の羽根だった。
何気なく拾い上げ、日に当てながら見ると、透けるように真っ白だった。
汚れ一つ無い。
真っ白な羽根。

そのときだった。
その羽根が本当に透けて消えたのは。

驚いた。
まさか消えるなんて、誰が思うだろうか。
まるで確かめるように持っていた指をこすりあわせる。


「雲雀、さん?」


そんな時だった、後ろから僕を呼ぶ声がしたのは。
僕は少し驚いて振り返った。
そしてまた驚いた。

そこにいたのは、沢田綱吉だった。


「君…」


まるで気配が無かった。
僕が気付けない程、完璧な気配の消し方。
まるで別人に見えた。
目の前にいる沢田綱吉が、沢田綱吉じゃないように見えて…。


「雲雀…さん、」


沢田は一瞬、少し驚いた顔をして、屋上への階段を上ってくる事なく、数段の所で足を止めた。


「君、授業は?まさかサボリ?」


「い、いえ!あの、雲雀さんに用があって来ただけなんで、直ぐに戻ります。」


「…?」


やはり何かがおかしい。
何かが違う。
まるで、何かを隠しているような、
ただみていても分かる、隙が無い。


「で、用って何?」


そう言うと、沢田は少し呆けたあと微笑み言った。


「いえ、もう用は済みました。」


「は?」


「じゃあ俺、授業に戻りますね。」


そう言って沢田は来た道を戻ろうと背を向けた。
僕はというと、特に何を聞かれたわけでもなく、されたわけでもなく、ただ謎が残った。


「待ちなよ、」


何だかムカついて、癪だが沢田の後ろからトンファーを振り下ろした。


――が、その攻撃は避けられた。
それも最小限の動きによって。
その際に何か言っていたが、上手く聞き取れなかった。


「雲雀さん!いきなり後ろからとか止めて下さいよ!」


確かにこの草食動物は弱いのか強いのか分からないことがあった。
しかし、今は違う。
これは、強さを隠した獣だ。
そう分かった瞬間、体中の血が興奮した。
口元さ自然と緩み、沢田を見ながら言った。


「…君、何者だい?」


「…は?」


「…今の君はまるで羊の皮を被った狼だ。全くの隙がなければ、避ける時の身のこなしが今までとは違う。
まさかこんな実力を隠していたなんて驚いたよ。」




 
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