長編

□愛しき君よ
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――こんなはずじゃ、なかったんだけどなぁ…。


「ひ、雲雀…さん?」



あの後自分の体を見て驚愕した。
突然小さくなったのかと思ってしまうくらいに。
しかし、カレンダーの日付や、年号、町の風景、全てにおいて俺の記憶にある昔の並盛だった。
日付を見れば、まだリング戦も骸が率いる黒曜との戦いもまだだった。
まだ若い母親の顔、ビアンキ、まだ赤ん坊なリボーン、ランボ、イーピン、ふう太。
何気ない朝の風景。ここで気づいた。

―俺は、過去に戻ってきたのだ…―

果たしてあの声は誰だったのだろうか、死ぬ前に薄れていく意識の中聴こえた声。
その声に導かれて、過去に戻ってきた。
分からないことだらけだ。
考えても仕方がない、そう判断して、俺は9年ぶりの中学校に足を運んだ。

そこで獄寺君や山本、シャマルらに会って確認し回った。
そして最後に、俺の最愛の恭弥に会いに、少し胸を踊らせて屋上に向かった。

恭弥に会った時、涙が出そうになった。
何もかもが懐かしい…。
場所を選ばずいきなり攻撃して来るとことか、
真っ直ぐと素直に攻撃してくるとことか。


「恭弥は、変わんないな…」


ぼそりと小さく呟いた。



――そしてこの現状。


しかし恭弥も勘がいい。
俺の変化に気付いたらしく、俺を何者扱い。

まあこの時代の俺なら、あんな避け方はしないだろうが。


「何、言ってるんですかっ。俺は沢田綱吉です。」


出来ればバレたくはない。
あの出来事だけは、起こしたくないからだ。

思い出しただけで悲しくなる。
貴方まで死なせてしまった忌まわしい出来事。
その本人(過去の姿だが)が目の前にいるのだ。
あんなに冷たくなって動かなくなった貴方が…。

触れたい。

(触れられたい。)

抱き締めたい。

(抱き締められたい。)

そして、あの唇に……


「何呆けてんの、」


しまった、トリップして…!

恭弥は俺の顔めがけてトンファーを振り下ろしてきた。



 
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