雲綱♀短編
□Lost in admiration of you.
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もう、くらくらする。
Lost in admiration of you.
あつい。5月だと言うのになんなのだろう、この暑さ。
その日はまさに雲一つ無い晴天で、夏なんじゃないかと疑いたくなる程気温が高かった。
制服のスカートが風に靡く。風はまだ春風で、程よく涼しい。綱吉は校舎の窓から風を受けて涼んでいた。
「綱吉」
ふと、後ろから呼ぶ声がした。綱吉は突然の声に少し吃驚したが、すぐにその聞き慣れた声の主が誰だか解ると、笑顔で振り向く。
「雲雀さん」
そう名を呼ぶと、どこか柔らかく微笑む雲雀。
いつからか、そう、いつからか雲雀との関係がほんわり柔らかくなった。去年の今ごろは目すら合わせられなかったのに、最近はこうやって笑って話せるようになっていた。
「風紀のお仕事ですか?」
「うん、君はどうしたの?今日、学校休みなはずだけど」
「私は雲雀さんに用事が…」
「僕に…?」
はい、と綱吉は小さく頷き、風で靡く髪を押さえながら言った。
「今日、夜時間空けといて下さい。リボーンが渡したい物があるとかで」
「赤ん坊が」
「あ、これリボーンが雲雀さんにって…」
ポケットから徐に手紙を出し、雲雀に渡す。
それだけ渡すと綱吉は、それじゃあ、と小さく会釈してその場を去ろうとする。しかし途中で止まって再度振り返り、雲雀さん、と名を呼んで、満面の笑みで言い残して行った。
「お誕生日おめでとうございますっ」
その場に残った雲雀は一瞬動きを止めて、視界からいなくなるまで綱吉を見つめていた。
開いた窓から流れる風が、少し火照った頬を凪いだ。
「よう、遅かったな」
「リボーン、ああいうのは自分で頼みに行ってよ」
「あれはお前じゃないと駄目だからな」
「はあ?」
帰宅した綱吉は制服から私服へと着替えながらリボーンを少し睨んだ。リボーンはニヒルに笑んで愛銃のメンテナンスをしながら言う。
「今夜が楽しみだ」
カチンと銃のトリガーが鳴った。