雲綱♀短編

□Ardent love
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立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は……――――







Ardent love








―――挑発するように眼差しを向けるその瞳は、あまりにも妖艶だった。


 今日はボンゴレボス主催の生誕祭が催されていた。といっても、誕生日はボスではなくその部下で、部下をこよなく愛するボンゴレの女ボスは、毎年部下の誕生日には贈り物を与えていた。特に守護者には「祭りだ」「宴だ」と騒ぎに騒ぐイベントを用意する。これはまあボスが楽しいからやってるだけで(日頃の憂さ晴らしも兼ねて)、誕生日を迎える相手の私情など無視の労り皆無なイベントだ。
朝から晩までどんちゃん騒いで、次の日二日酔いで倒れそうになりながらも仕事をする。これは今のボスがボンゴレ10代目として就任してからの恒例行事になっている。
 そして、今日その餌食にされるのが、雲の守護者――雲雀恭弥だった。
雲雀は勿論毎年断っている。しかし、ボスは毎年誕生日近くになるとストーカーのように毎時間電話をしたり、暇さえあれば雲雀をつけまわしたり、最終的にガチバトルで決着をつける。
が、守護者一強いと言われる雲雀でさえも、ボスにはかなわなかった。それだけ意気込みが凄いのだろう。



「楽しんでるか雲雀」

「…やあ、君か」


ワイングラスを片手に、中学生時代の姿と打って変わった青年へと成長したリボーンがニヒルに笑う。


「帰って良い?」

「それはアイツに言うんだな。――ほら、お出ましだ」


瞬時に会場がざわつく。
リボーンがくいっと顎で示す方へ向くと、そこには真紅のドレスに身を包んだボンゴレボスがいた。腰まで伸ばした髪は纏め上げられていて、深紅の薔薇で飾られ、唇には鮮やかな紅い口紅。


「…沢田…?」

「こりゃ化けたな」


会場の人間の視線がボスに向けられる。雲雀は呆気にとられて動きを止めた。そんな雲雀を見てリボーンは隣でくつくつ笑っていた。


「……雲雀さん、」


真っ赤なヒールを鳴らして雲雀に近づく。良く見ればドレスの左側が腰辺りまでバッサリ開いていて、その肢体が惜しみなくさらけ出されている。それはボンゴレボス10代目――沢田綱吉の狙いでもあった。
 雲雀と視線が合うと、綱吉は紅く染まったその唇で妖艶に笑んだ。
それはまるで、挑発するような誘惑だった。



 
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