短編

□雨のち、晴れ
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毎日毎日、雨ばかり。
空気もジメジメしていて、肌がベダベタするのもうざったくて嫌いだ。
授業中、空を見上げれば灰色に曇っていて、雨が止む気配すら見せない。
はぁ…、と俺は一つため息をついた。



――梅雨。


今日も朝起きてからすでに降っていた雨は、止む事もなく、むしろ酷くなる一方だ。
こんな湿度の高い空間で、勉強など出来るわけでもなく、しかし寝るにも億劫だ。

教室には教師が黒板に何かを書いているチョークの音と、雨の音が響いていた。









雨のち、晴れ









キーンコーンカーンコーン


本日の終業ベルがなった。

今日も勉強など頭に入るわけでもなく、何だか退屈な時間を過ごした。
曲がった背中を伸ばして、獄寺君と山本を誘ってさあいざ帰ろう、と思ったら思い出してしまった。

今日は補習だと…。

俺のクラスだと俺一人、ああ、本当についてない一日だ。
仕方なく獄寺君と山本に断って、担当の先生を呼びに職員室へ、
しかし今日に限って先生はお休み。
(それを早く言ってよ…。)

学校にいても何もすることがないので、一人で帰ることにした。

傘を差して校舎を出る。
見上げれば雨はとめどなく降り続け、グラウンドの上を歩けば靴が泥だらけだ。


(せっかく、新調したのにな…。)


梅雨は嫌いだ。
空気も、温度も、天気も、全てにおいてうざったくなる。
ズボンだってびしょびしょになるし、暑いのか涼しいのか分からない温度も嫌だ。

早く帰ってしまおう。
そう思って進める足を速くすると、一瞬、背中に電気のように伝うものがあった。
ぞくり、と体を震わせれば、後ろから人の気配。
後ろを振り向けば、そこにいたのは、


「、む…くろ…?」


藍色の大きめな傘に覗かせるのは奇妙な独特な髪型に、濃い緑の制服を纏った男。
――六道骸だった。


「おや、こんにちは、沢田綱吉」


「どうして…、」


まさかこんな所で会うとは、まさに予想外だった。
予想すらまずしていなかった。
だからもう、どうしているのか、ぐらいしか頭に出てなくて、つい呆けた顔で言ってしまった。


「さて、どうしてでしょう。」


その言葉に骸は口角を上げた。


「だってお前、隣町じゃないかっ、何しに来たんだよ…。」


一連の事件のこともある、
いつにも増して警戒した。


 
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