記念小説

□センチメンタリスト
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いない、いない、君がいない。



センチメンタリスト






――最後に体を重ね合わせたのはいつだろうか。









「んっ……ぅあっ!」


 カーテンも閉め切った真っ暗な部屋に、濡れた声が響く。

ベッドの軋む音。荒い息づかい。シーツの擦れる音。
衣類が乱れては剥がされ、一糸も纏わぬ体を体液で濡らしていく。


「ふぁ…や、まも、っんうっ!」


綱吉は深い口付けにぴくりと体を震わす。
太股から徐々に上にと上がる大きな手のひら。
綱吉の既にヒクヒクと震えそそり立つものを上下に扱けば、びくりと腰を跳ね上げる。


「も…、だめ…っ」


山本と呼ばれる彼は、緩めたネクタイを外し、ワイシャツのボタンを荒々しく外す。
そして綱吉をうつ伏せに寝かせ、腰を上げさせる。
カチャリとベルトの外れる音。
そして既に濡らし慣らせた蕾に一気に差し込む。


「ぅあぁああっ!」


背後から酷く苦しくのし掛かる圧迫感に、綱吉は唸るように喘いだ。
そして抜き差しされる度に感じる妙な排泄感や快感に、太股を自らの精液で濡らした。


「もっ、だめ…っ…で、る…っ」


絶頂へと限界が近づく綱吉に、山本も自らの限界を感じ、己のものを締め付ける快感に溺れながらも、耳元で、俺も、と小さくかすれた声で囁き、耳朶を甘く噛み、舌で中を犯す。
綱吉は官能的な濡れた声をあげ、ピクリと首元を震わせば、あまりの快感に相手のものを更に締め付けてしまう。


「………く…っ」


山本が息を詰めた次の瞬間、綱吉の中に自らの熱を放った。


「あ…っんぁあぁ…っ!」


綱吉は中で脈を打ちながら熱いものを注がれたのを感じれば、次いで自らの熱をシーツに向かい放つ。
絶頂を迎え、後の脱力感でクタリと力無くうつ伏せになれば、下半身から未だ脈動打つものが抜かれるのを感じた。
綱吉は排泄感に小さく声をあげれば、自らの蕾からコポリ、と卑猥な音をあげて抜かれ、白濁とした液が栓を抜かれたかのように溢れ綱吉の内股をなぞりシーツに滴り落ちる。
山本はうつ伏せの綱吉の上に倒れ込み、そのまま抱きしめた。

二人に会話はない。あるのは二人の上がった息使いだけ。
綱吉は体の向きを変え、山本と向かいあった。
そしてそのまま山本の首に腕を滑り込ませて、火照った妖艶な顔でキスを迫る。
山本は口元を緩ませ、応えるかのように、唇を合わせた。


――愛してる。


小さく囁いた言葉は、山本の記憶の中最も新しい、彼の最後の言葉だった。



 
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