短編

□Stare at me
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なんなんだ、これは。
今のあの子を見ていると酷く苛つく。

これじゃあ、これは、


「……本当に迷惑だ。」



これは、恋じゃないか。


「…困ったな……。」


雲雀はぼそりと呟くと、困った顔をして笑う彼を見て、くつりと微笑した。


問い詰めてみようか。
この気持ちが本当にそうなのか、確信しに。


(あの子、どんな顔をするかな…。)


そうだ、呼び出してみよう。

まだ見ぬ先に思いを膨らませ、雲雀は微笑みながらデスクワークへと戻った。

窓は開けたままで、体育の授業中の生徒の声がする。
雲雀は珍しくやかましいとは思わず、あんなに詰まっていた書類整理も、今度はすらすらと進んだ。




――授業終了のチャイムが鳴り、雲雀は放送で彼を応接室に呼ぶ。

案の定彼はおびえていて、視線をそらしながら扉の前で突っ立っていた。
雲雀はそんな彼に近づかずに聞く、


「ねぇ、君を見ていると胸が高鳴ったり、苦しいんだよね、君、僕に何かした?」


「え…っ、俺は、なにも…っ」


まだ、視線が絡まない。
まだ彼は視線を泳がせている。
雲雀はそんな彼に微笑んで再度聞く。


「じゃあ、なんで?」


「え…、」


「なんで、こんな気持ちになるの?」




さあ、君の答えを聞かせてもらうよ。


どうしてこんな気持ちになるんだい?

ねぇ、僕を見て答えてよ。





―――沢田綱吉。








 それは、桜が花を付け始めた春先の出来事……――






Stare at me


君も、僕を見ていてよ。




      ―end―

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