短編

□I can hardly to see you!
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「リボーンさん!じゅ、10代目が…10代目がいらっしゃいません!」


「ああ、アレなら日本だ」






I can hardly to see you!









 どこまでも澄み渡る青空に目を細め、ぽかぽかと暖かくなってきた春風に触れながら、綱吉は故郷の地へ足を踏み入れた。
本部のファミリーには仕事だと言って出てきたが、今日は別に仕事で来たわけでは無い。嘘を吐くのは悪いと思ったが、今日だけはどうしてもやらなければならない重大な行事がある。ボディーガードを連れていけと言われても無視。今日だけは邪魔されたくないのだと、口には出してないが元家庭教師様をどうにか説得した。


「さーてと、行きますかっ」


一度大きく伸びをして、長時間のフライトでなまった体を伸ばす。
タクシーに乗って、あの人のいるであろうあの場所を目指した。


「待っててくださいよー、雲雀さん」


そう呟く綱吉の表情は、いつになく笑顔だった。





 タクシーに揺られること一時間、タクシーはとある神社の前で止まった。
綱吉がここに来たのは他でもない、ボンゴレファミリー雲の守護者こと雲雀恭弥に会いに来たのだ。
雲雀と綱吉との関係はボスと守護者以外にも、嘆かわしくも恋人同士だったりする。関係も長く、既に8年は続いている二人はまさに相思相愛なのだろう。
大学を出た綱吉はそのままイタリアに直行。ちゃんとした別れも告げぬまま日本を離れ、マフィアのボスになんてなった。まさに引き裂かれたような二人。それから多忙な毎日が続き、雲雀とはたまに電話をする位になった。会いたくても仕事が邪魔して会わせてくれない。
そこで綱吉の堪忍袋の緒が切れた。雲雀の誕生日に仕事もボイコットしてやる。
思い立ったらすぐ行動。雲雀に連絡を入れて、周りを押し黙らして一人で日本に帰国。もちろん手土産を持って。


「………重い…っ」


両手にぶら下がっている手土産が詰まっている紙袋を時々地面に置きながら一段一段登って行く。
並盛神社の階段がこんなに長く感じるのは初めてだ、と綱吉はブツブツと呟いていた。
 その時、茂みから微かに何かを弾く音がした。綱吉は直感的に体を後ろへ倒し、音の方へ銃口を向けた。

―――パァンッ

甲高い音が鳴り響く。
それと同時に、発砲されたであろう茂みに飛び込む。しかし、すでに気配が消えていた。


「――逃げたか…」


ここに来てスナイパーに会うとは予想してなかった、と綱吉は再度周りを確認した後、階段に戻り、再び足を進めた。


 
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