短編

□Let's play hide-and-seek!
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 5月5日、ゴールデンウイークも終盤にさしかかった頃、家庭教師様は傍迷惑な事を持ち出してきた。



「かくれんぼするぞ」






Let's play hide-and-seek!







 しん、とした校庭に一陣の風が舞う。誰一人としていない学校に、綱吉は脚を踏み入れた。


「10分後、鬼がお前を捜しに校内に出現する。お前は終了時間まで見つからずに隠れるんだ」

「いや、意味わかんないんだけど」


理由を問うが、答えらしい答えは聞けなかった。きっとまた修行とかなんじゃないか…と、瞬時に予想される現実離れした行事に身を震わす。
鬼って誰だよ、と綱吉が訊けば、リボーンはニヒルに笑って答えはしなかった。


「見つかったら即アウト。そのまま地獄へ御招待だ」

「はい!?」

「死ぬ気で隠れろよ、」

――さもないと、本当に死ぬぞ?
リボーンはニヒルな笑みのまま、銃口を空に向けて銃弾を放った。






 綱吉は必死だった。まさに死ぬ気で校内を駈けていた。
持ち前の直感と日頃の経験で分かる。

(――あれは本気だ…!)
 
突発的に行われる修行と称した無茶苦茶なイベントには慣れて来ているが、今回は特によくわからなかった。
なぜ自分1人なのか、なぜかくれんぼなのか。そして、走り出す直前に意味もなく渡された真っ赤なリボン。
それを言われたように手首に巻いて、隠れる場所を探す。
理由なんて直ぐに解る。いつもこうだから。
きっとリボーンの事だ、様々な場所に罠を仕掛けているはずだ。…いや、もしかしたら鬼は1人ではないのかもしれない。
今までの経験から“普通”という概念は意味を齎さないと知る綱吉は、ただでさえ無い脳をフル回転させ、様々な事を予想をした。


 10分、2度目の銃声。鬼が校内に出現して動き出した。


 綱吉は誰にも見つからない、むしろ一定の人間以外は誰も立ち入らないとある場所に身を潜めた。
きっと鬼にはそんなこと意味無いと知っていても、その場所にいると今回ばかりは安心するのだ。
終了時間まであと一時間ちょっと。
もしもの時には持ち前の直感を頼りにして見つからないように逃げれば良い。綱吉はほんの微かな確信だけを頼りに身を潜め続けた。



 
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