完結済みの小説

□跡部様と宍戸さん
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全国大会で、青学に敗れた氷帝レギュラーの三年生たちは、夏休みの終わりとともにテニス部を引退をした。

氷帝学園中等部から持ち上がりで、高等部への進学が基本の生徒たちに、余り受験生という概念はないのだが、それにしても少なからずの入学試験はある。
高等部からの外部入学の受験生たちから見たら、目を見張る程の広き門だが、一応の足切りだってあるのだ。

跡部は引退をして部長職を退いた今、かつてのレギュラーたちの進学まで気にしてやる必要はないと、頭では理解しているのだが、それでも苛立ちを隠せずにいた。

自分や忍足、それに滝だって問題はなかった。
問題は、幼稚舎からの生粋の内部進学組のあの三人だ。

そもそも三年間も同じ部活に居ながら、跡部はあの三人が勉強をする姿を、一度も見たことがなかった。
幸か不幸か、三年間クラスメイトにもなったことがなく、跡部にとってあの三人は放課後のイメージしか無かったのだ。

あいつら一応の受験勉強はしてんだろーな、レギュラーが足切りにあって、高等部に進学出来なかったなんて真似、俺様の代じゃ許さねー。

跡部がここまで不安に感じるには、それなりの理由があった。

テニス部引退後、一応の受験勉強を始めた忍足と滝は、それぞれ塾や家庭教師に付き、今まで部活動の忙しさで遅れていた分の勉強を、巻き返そうと努力をしていた。
跡部自身の事は、言わずもがなである。
そもそも中等部で外部入学をしてきた跡部たちは、その時点でそれ なりの偏差値だったからこそ、氷帝学園中等部へ入学出来たのだ。

ところが幼稚舎のお受験以降、全くそれらしいハードルの無かったあの三人の引退後は、一人は放課の下校時間までひたすら寝たおし、一人は授業が終わるなりゲームセンターに入り浸り、最後の一人は有名テニススクールに通いつめ、引退前よりもより一層テニス三昧に過ごしていた。

しばらくはその様子を静観していた跡部だが、我慢も限界だったのだろう。
ついに忍足を捕まえ、探りを入れてきた。
「おい、あいつらちゃんと受験勉強してんだろーな」
忍足は相変わらず俺様な跡部の物言いに、呆れつつも、未だに部員の様子を気にしてやる面倒見の良さには、感心をした。
「どうやろね、岳人の様子を見てると、あんまりしてないんとちゃうかな」
跡部の眉間に皺がよる。
「んなんで、高等部の足切り、大丈夫なんだろーな」
「大丈夫やろ、部活動の成績だって内申点に入るんやし、そもそもあの子ら、生粋の氷帝っこや。そう簡単には切られへんって話やで」

確かに学園は内部進学に甘く、特に幼稚舎からの生え抜きたちは、明らかに優遇処置を受けていた。
それ故に彼らは、好きに眠り、好きに髪を染め、好きに髪を伸ばしたりするのだろう。

跡部はちょうど良い機会だと、以前より不思議に思っていた疑問を投げ掛ける。
「そもそもあいつらの成績はどーなんだよ」
忍足は首を傾げ「さあな」とだけ答えた。
「さあな、じゃねー。向日の成績位せめて知っとけよ」
余りに勝手な跡部の言い分に、忍足は軽く肩を竦める。
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