完結済みの小説

□跡部様と宍戸さん 再会編
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こんな筈ではなかった。

跡部が五年振りに、日本の地に降り立った時、跡部は宍戸との甘く切ない思い出に胸を高まらせていた。

この五年間跡部は一日でも早く日本に戻るため、寸暇を惜 しむように勉学に励み、心に沿わないパーティーにも進んで出席し、跡部景吾の名をイギリスの社交界に広めた。
それは近い将来跡部を継ぐために必要な事であり、跡部はそれを積極的にこなすことにより、彼の父を始め親族たちに自分を認めさせ、帰国の許可を得た。

全ては宍戸の元に帰るための努力だった。
跡部は初めて宍戸を抱いた、あの日の事が忘れられなかった。
何度も何度も「行くな」と囁く宍戸が堪らなくいとおしく、その誘惑に負け、側にとどまると誓いたかった。

しかしそれは跡部の将来を考えると不可能なことだし、仮にこのままとどまったとして、跡部を宍戸の中のテニスと別離させることは出来ないと思えた。
宍戸にも跡部から離れ、その関係を見直す時間が必要だ、離れる時間は必ず将来の自分たちの糧になる、跡部はそう確信していた。

そしてその期間を終え、跡部は宍戸の元に帰ったつもりだった。
宍戸とは日常の激務から、頻繁に連絡を取ることは出来なかったが、折に触れ会いたいと、会って抱きしめたいと跡部の気持ちを伝え続けた。
宍戸からは実に彼らしい、素っ気ない返事が返るだけであったが、それが却って宍戸らしく跡部の心をくすぐった。

最後の連絡で跡部は帰国の予定を宍戸に伝え、一秒でも早く会いたい、帰国を待って欲しいと伝えた。
高鳴る跡部の気持ちを嘲笑うように、帰国ゲートに宍戸の姿はなく、滞在先と伝えたホテルにも宍戸は現れなかった。
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