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□余裕のない跡宍
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「ああ?なら言ってやんよ。もううんざりなんだよ、お前を待つのは。忙しい?急用?んな言い訳とっくに聞きあきたぜ」
「・・・黙れ、宍戸」
「黙らねーよ。俺はお前のもんじゃねえ、勘違いすんなよ跡部。俺は俺自身のものだ。いつだって俺の自由で生きられんぜ」
「黙れと、言っている」
関係の終焉となる決定的な言葉を言わせたくないと闇雲に宍戸を黙らせようとする跡部に対して、日頃の鬱憤から自分でも暴言を止められなくなる宍戸。
「変わったな、跡部。こんなんじゃなかったぜ、俺の惚れた男は」
「あの女ならば、テメエの想像してる様なのとは違う」
肩に回された跡部の腕を、宍戸は強い力ではねのける。
「そうかよ。それで次は一体何が出てくんの?婚約者?断れねえ仕事の付き合いの女?それともいっそ結婚でもしちまえよ」
「約束する。宍戸、愛しているのはお前だけだ」
「愛している。愛している。愛している。そう言や俺が納得すると、そう思ってんだな」
本人の意思と関係無く流れる涙に驚き「くっそ」と、乱暴に宍戸は涙を拭う。
それを呆然と眺め、絞り出す様にして跡部が呟く。
「俺には、テメエを愛しているとしか言えねえ。それ以外の言葉は持ち合わせちゃいねえのに・・・お前を、宍戸。泣かしてえんじゃねえのに」
長い付き合いの中で初めて見せた宍戸の涙に、跡部はそれ以上続ける言葉を失った。
【終わり】