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□跡宍幼なじみ設定があった頃のSS
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一目惚れだった。氷帝学園幼稚舎のいわゆるお受験の会場で、跡部は宍戸に出会った。
宍戸は大きな瞳が少しつり上がっていて、小さな鼻と口との不思議なバランスを描いた魅力的な顔をした少女だった。
柔らかそうな丸みを帯びた頬を美しい黒髪が優しく覆い、時折それを煩そうに耳に掛ける仕草がとても可愛らしい女の子だ。
跡部はもしこの少女がお受験に合格して、再び自分とこの氷帝学園で出会うことができたならば、それは間違いなく運命だと、そう確信をした。


*****


「おれさまの運命の女だと思ったんだけどな」
跡部は小さな唇からため息をこぼしそう呟いた。
入学式の間中、真新しい制服に身を包んだ女子をひとりひとり見回していたが、結局あの少女を見つけることは出来なかった。
肩を落としながらトイレで用を足していると、入口の辺りで賑やかな声が聞こえてくる。

「ジローちょっと待ってて。おれオシッコしてくる」
「分かったリョウちゃん、教室で待ってるね」
「おう、寝てるなよ?」

あまりの大声に眉をしかめた跡部が、入口に目を向けると、ちょうど廊下に向かって話し掛けながら、後ろ向きでドアを開いた少年が入って来た。おかっぱ頭の、男子にしては長い髪をした子だった。
跡部は振り向いた少年の顔を見て、一瞬思考が止まる。それは間違いなくあの跡部の運命の少女だった。
だがしかし運命の少女は跡部と同じ男子の制服に身を包み、事もあろうに跡部の隣の小便器に立った。
そして唖然とする跡部の横でズボンのチャックを下ろすと、おもむろに小さなおちんちんを引っ張り出してオシッコを始めたのだ。
跡部はその元運命の少女の姿から、目が離せなくなる。
じっと自分を凝視する視線に気づいたのか、少年は隣の跡部をジロリと睨む。それは間違いなく跡部が可愛らしいと思った、あのつり上がり気味の大きな目だった。

「おい、ガイジン。なに見てやがる」

何も答えられない跡部に苛立った様子で「おいってば。日本語わかんねえの?見るなよって言ってんの」と少年は早口で告げると「うりゃっ」と呆然自失の跡部に向かってオシッコを引っ掛けた。
これが跡部と宍戸の正式な出会いの場で、その後暫くはこの出会いが跡部の大きなトラウマになったのだった。


【終わり】

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