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□榊←宍でクリスマス、少し跡宍
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「はよー、侑士」

12月25日の朝、既に引退して朝練から解放された身なのであの夏の頃よりはゆっくりと登校する忍足に、向日が明らかに眠そうに声を掛けた。
振り返れば自分の元ダブルスのペアは、宍戸に手を引っ張られる様にして歩きながら欠伸をする。

「おはようさん」

宍戸は右手に向日を、左手には完全に寝ている様子の芥川を引きずり「ん、助かったぜ忍足。教室まで連れてって」と、強引に右手に握っていた向日を押し付けた。
押された向日はそのまま、フラフラと歩みを進め忍足にぶつかり寄り掛かる。

「随分眠そうやな」
「おー徹夜明け」
「あかんよ、ちゃんと睡眠取らんと。お肌が荒れるで」
「キモいぜ」
「傷付くわー。またゲームでもしてたんか?」

コクンと頷くだけの向日に代わり「クリスマスプレゼントに、父ちゃんからモンハン貰ったから完徹したって」宍戸が呆れた口調で告げる。

「なんや夢がないな。岳人のプレゼントは、真夜中にサンタが持って来るんとちゃうんか」
「失礼な奴だな忍足。一応こう見えても、岳人も俺らと同級生だぜ」

宍戸が嫌そうに顔をしかめるので忍足は肩を竦め「せやな」と笑う。
それでもこの幼なじみトリオには、サンタを未だに信じていると言われても違和感を覚えないものがあると、常々忍足などは思ってしまうのだ。
あかん、宍戸にでも知られたらシバキ落とされそうやなと、半笑いになれば早速その本人に胡散臭げな視線を投げられる。
その時完全に眠っていたと思った芥川が「マジマジサンタとかあり得ねえ話を、俺らん中で一番最後まで信じてたのって宍戸だC」と突如大声で告げるので「バッ・・・ジローてめえっ!!」と焦った宍戸が赤くなりながら芥川の口を塞いだ。

「うーうー」
「ホンマ?意外やわー。自分が一番しっかりしてそうなのにな」
「本当だぜー」
「岳人!」
「だって宍戸中等部で監督に再会すんまで、マジにサンタだと信じていたじゃん」
「監督て、榊監督のことなん?」

焦る宍戸をからかう口調で向日が「おー榊監督だぜ」とこたえた。

「榊監督とサンタが、何の因果関係があるん?」

宍戸の腕から逃れた芥川が「監督がサンタだったんだC」とまるで謎な返事を返す。

「幼稚舎ってこの時期クリスマスパーティがあるんだけどよ、毎年上の学校の先生たちがサンタに扮して、一人一人にプレゼントを配ってくれんの。で俺たちが5年の時のサンタが、やたらダンディーなサンタでよ」
「髭も衣装もサンタのなんだけど、不自然にスタイルが良くてプレゼントのお礼を言うと指を二本立てて、行ってよしって言うんだC」

自分たちの監督を思い浮かべて「まんま榊監督やな」と忍足が呟く。

「だろ?けど俺らはその頃榊監督なんて知んねーし、変な先生が居んなーと思ってたんだけどよ」
「その監督サンタがプレゼントのテニスラケットを渡しながら、宍戸の髪を美しいなって言って、キスしたんだー」
「キスー?それは不味いんちゃうの?色々と」
「違げえよ唇じゃねえもん、髪に、だ。俺の髪を一房掬ってこう・・・あーっ、とにかくキスしたの」
「さよか、で?」

それかて十分不味いんちゃう?と言いたいのを堪え忍足続きを促す。

「宍戸ってば、真っ赤になって黙っちゃってよー。そしたら監督が中等部のテニス部で待ってる、行ってよしって」
「そんで宍戸は、テニス始めたんだC」

成る程と、忍足は二人に「黙れ」と蹴りを入れる宍戸を眺めた。
つまり宍戸は監督サンタに惚れて、テニスを始めたっちゅー訳や。
綺麗な髪だと誉められずっと伸ばしとったんを、その本人を前に切ったんか。案外宍戸もロマンチストやな。
もっともその後乗り換えた今の宍戸の恋人の姿を思えば、結局はキザな男が宍戸の好みやちゅーとこなんか?そら意外やな。


【終わり】

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