短編とか

□バス停
1ページ/1ページ



 あと5分…。
 腕時計とバス停の時刻表の間を行ったり来たりしている俺の目線。

 学校の前のバス停には1時間に3本しか止まらない。
 すると…バスに乗る人は決まって来る。

 今日もまた、キミは停車時間ギリギリに全力疾走でやってくる。


 (そんなに急が無くても20分待てば次のバスは来るのに…。)


 俺はいつも、キミの姿を直接見ずに、背中でその息使いを感じる。

 予定時間まであと…20秒…。
 顔をあげ、道路を見つめるとそこには何もない。
 今日もいつも通り5分…いや7分は遅れてくるのだろう。

 鞄の中にいつも入れている本を取り出し暇つぶしに読み始める。


 “ジャリッ”

 ほんの小さな音。ほんの1歩…。
 その音が“プツリ”と俺の集中の糸を切ってしまった。

 顔を上げるとキミが横に居た。


 「バス…来ねーな。」

 初めて聴くキミの声は、授業中に聞く先生の声とも同級生の声とも家族の声とも異なって聴こえた。

 なんというか、“スー”と俺の耳に…心に響いた。

 この時間に乗る人は俺とキミしかいない。


 「そう…だな。」


 本を読む気を失った俺は手にしていた本を鞄に戻し再び時計を見る。

 6分過ぎていた。


 「もうチョイで来る。」

 「ほんとや。バス来たわ。」


 その言葉に導かれた目線の先には、いつものバス。
 そのバスは俺たちが待っている場所から少しずれて停まった。

 無言で、バスに乗り込み…定位置の席に座る。

 俺は出口の近く。キミは入り口の近くに…。

 いつも通りなのだか、なぜか今日は違う。
 キミと一言、二言言葉を交わしただけなのに…。

 いつも通り、読みかけの本を開くけど集中なんて出来なくて流れる窓の外を眺め続ける。

 バス停を8か所ほど過ぎた頃、キミの降りるバス停がある。

 停車の音が流れる…
 バスが停まり、出口の扉が開き、君が降りる。
 その時…
 

 「また、明日な!」


 一言だけキミは俺に声をかけて、バスから降りた。



 その後、俺はいつも降りるバス停を一つ乗り越してしまっていた。



・・・・・・・・・・・・・END?
 いかがでしたでしょうか?
 感想とかよかったらお願いします ||:・’)
 


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ