短編とか
□幕末(仮)
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「はぁはぁはぁはぁ」
自分の苦しそうな声が聞こえる。
俺は今…夜の町を全力で駆けている。
普段はきっちりと着こなしている服も不恰好に走る所為か崩れてきた。
「畜生…なんでこうなっちまったんだよ。俺は何も知らねーって!!!」
背後を確認すると5・6人もの見知らぬ奴らに追いかけられていた。
さかのぼること10分前…
仕事終わりに酒も飲めねーのに、無理やり酒屋に連れて行かれた俺はつまんねー時間を白湯片手につまみをかじりながら潰していた。
ざるなツレに付き合っているとさすがに白湯でも飲み過ぎたのか、尿意を催してしまった。
「ちょくら、厠に行ってくる。」
店を出て厠に通じる道を進もうとしたら、前から人が歩いて来て…
“ドンッ”
ぶつかった…
相手はそのままフラフラと夜の街へと消えていった。
早く厠に行きたいということもあったが、酔っ払いがフラフラしていても可笑しくない時間帯だったため俺は気にせずに歩みを進めた。
厠について、妙な違和感を感じた…
………人が倒れていたのだった。
「あ… あにきぃいぃぃい!!! き…貴様が兄貴をぉぉぉ? よくもおぉぉぉぉお!!」
背後で、野太い叫び声が聞こえた。…え?
上手く回らない頭でも、大きな叫び声といかにも今からボコボコにしてやるという気迫の前で俺が兄貴とやらをヤっちゃたと誤解されたのは分かった。
そして、俺の命の危機が迫っていることも…
頭は働いていなくても、足は自然に逃げ出していて…
・・・・・・・現在に戻る。