魔人ブウ編

□学生時代
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トランクスは学校近くの公園のベンチに座り、酷く後悔していた。

あんな安い挑発に乗ってしまったこと、あの男子生徒の話を聞いてしまったこと。

もしかしたら今までにもあんな嫌味を悟宙は言われていたかもしれない。男子からも女子からも、恨みを買う可能性は充分にある。

もっと気を付けてあげるべきだった。そうすれば今回のようなことは起きなかったかもしれないのに。


「これじゃあ・・・全然ダメじゃないか」


ふと呟くと、見知った気配が近付いて来るのを感じた。よく知った、いつも待ち侘びている気配だ。

この気を感じる度に、嬉しくなる。それは幼い時からずっと変わらない感覚だった。


「みーつけた」

「・・・悟宙」

「破片で軽い切り傷、口止めもお願いしたから・・・たぶん大丈夫だよ」


微笑みながら隣に座る彼女は、ずいぶん大人に近付いたように思える。自分も、大人になっているのだろうか。

大人になったら、いつも一緒というわけにはいかなくなる。それがとても、不安だった。


「トランクス、腕出して」

「なんでだよ」

「怪我してるから」


悟宙の言う通り、腕に軽い切り傷や擦り傷があった。放って置いても問題ない程度のものだ。

けれど悟宙はそっと腕を取り、治癒能力を使用する。あっという間に擦り傷や切り傷が消えた。


「このぐらいどうってことないのに」

「私が嫌だから、いいのっ」

「・・・・・・アイツのも、治してやったのか」


自分でも、幼稚なこと言ってると分かっている。それでも舌は止まらない。

悟宙はそんなこと、気付いてすらいなかった。


「アレは他の人になんか使えないよ」

「・・・ま、そうだろうな」

「ほんとはね、トランクスの方に駆け寄りたかったんだけど・・・そうすると、治癒が使えないからさ」


後回しにしちゃってごめんね?困ったように笑う悟宙を見て、トランクスは自分が恥ずかしくなった。

なんて自分は子供なんだろう、と。悟宙の方がずっと大人だった。


「喧嘩なんて、珍しいね」

「・・・・・・」

「・・・何か、嫌なこと言われた?」

「なっ!なんで・・・!?」

「あ、やっぱり当たってる?ふふっ」


くすくすと笑う悟宙。どうやらなんでもお見通しのようだ。

本当に敵わないな・・・。笑う悟宙を見て、トランクスはそう思った。


「だって、何もないのにトランクスが怒るわけないもんね。・・・私は、分かってるよ」

「なんだよ、それ・・・」

「だって、昔からずっと一緒にいたし!私はどんな時でも、トランクスを信じてるよ」


にっこりと微笑む悟宙にトランクスは心を奪われていた。いや、とっくの昔に心は奪われている。

これを、惚れ直すと言うのだろう。


「ありがとう、悟宙」

「いえいえ」

「あのさ・・・」

「ん?」

「・・・俺、ずっと、悟宙のこ、」

「トランクスくーんっ、ねーちゃーんっ」

「あ、悟天!」

「ちっ・・・」


俺を置いて行かないでよー!そう叫びながら走って来る親友に、トランクスはつい気功波を打ち込みそうになった。
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