魔人ブウ編

□prologue
1ページ/2ページ

身体から旅立った魂が逝く所は、現世とは別世界の天界

そんな天界に澄んだ碧眼とシャンパン色の髪を持つ天使がいました

翼は真珠のような美しい純白、頭の上には死者達とは異なる黄金の輪

彼女は容姿だけでなく、手際良く仕事をこなすことから地位をどんどん上げていきました


いつから天使だったのかも分かりません

彼女はいつの間にか天使だったのです

彼女も彼女の仲間達もそんなことは気にしていませんでした


そうしている内にいつの間にか天使達のまとめ役になっていました

もちろん、それはとても誇りに思うことでした

自分を支えてくれる部下達と共に毎日毎日、仕事を続けました


ある時、彼女は北の界王神の元へとおつかいを頼まれてしまいました

彼のペットのバブルスを通じて、二人は顔見知りとなっていたのです

彼女にとって彼は優しく相談に乗ってくれる近所のオジサン的存在でした

また彼にとっては彼女はいい話相手・・・もとい、いい目の保養

彼女は暇な時に茶菓子を持ってよく界王星へ行っていました


長い長い蛇の道をお土産の手作りクッキーを持ってマイペースに飛んで行きます

大きな翼を羽ばたかせて鼻歌を歌いながら蛇の道の終点へと目指します

ふと、蛇の道に珍しく人がいるのが見えました

こんな場所に人がいるのはとても珍しいことです

しかも、その人間は生身の魂ではなく身体があるのです

気になった彼女はその人間の元へと近付きました

ココにいるということは、北の界王神に用事があるに違いません

普通なら天界の住人ですら近付かないこの場所に、一体どんな用事が?


近付いてみると、その人間は男性だと分かりました

黒髪に黒い瞳・・・そして山吹色の奇妙な服を着ています

一目みて、彼がとても綺麗な心を持っていることが分かりました

ここまで清らかな心を持つ者を見るのは、初めてでした

彼女は興味本意で彼の目の前に静かに降り立ちました

彼は突然現れた彼女に驚き、尻持ちをついてしまいました


「驚かせて、ごめんなさい」

「おめぇ、誰だ?」

「私は・・・」


彼女は名を教え、天使であることを伝えました

すると彼も名前と自分のことについて語りました

どうやら地球人らしく、この天界にも来たばかりのようでした

話を聞いていると、やはり彼は界王神に出会うのが目的でした

驚いたことに、彼に武道を習うと言うのです

彼は話し終えるとお腹を抱えて細々と呟きました


「腹へった・・・」


死人は食事をしないというのに、彼女はまた驚きました

そして、心優しい彼女は弱々しく腹を鳴らす彼を不憫に思いました

つい持っていた界王神へのお土産を全て渡してしまいました


それから彼に別れを告げて界王星へと向かいます

彼女の持って来ていたバスケットは空っぽになってしまいました

もう彼女の頭の中はおつかいのことなど消えています

彼女は初めて下界に興味を持ったのです


この気持ちは何だろう?


やっと辿り着いた界王星で再び彼と顔を合わせることになります

彼が界王星に居着くようになってから、彼女も頻繁に訪れるようになりました

目的はもちろん、彼の観察でした

前まではバブルスと遊ぶことだったのに、すっかり変わってしまいました


どうしてそんなに純粋な心を保ち続けているのだろうか





そんな出会いから彼女の淡々と仕事をこなす日々が一変しました
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ