魔人ブウ編
□第4話
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「ねえ、ほんとにそれ・・・やるの?」
大人の部の出場者らしき人物から奪った服を上手に二人で着る悟天とトランクスに悟宙は尋ねる。
大人の部に出場する選手に成り代わって、こっそり参加しよう!というトランクスの提案。
確かに面白そうだ!と賛成したものの、よくよく考えてみるとバレたらきついお説教が待っているに違いない。
「どうだ悟宙!」
「・・・バレても私は知らない」
でも応援はしてるからね、と笑顔で手を振って二人を見送る。悟天は不安しかなかった。
一人になった悟宙はなるべく人が少なく、見えやすい場所を探す。兄や今日会ったばかりの父の試合は気になる。
もちろん、変装して大人の部に乗り込むトランクスと悟天の試合も。
「お母さん達の所より、こっちの方が見えやすい・・・」
できるだけ近くで見える場所、悟宙は屋根の上に座った。バレたら叱られるだろう。
けれど皆、選手達の方を気にしているため気付きそうにない。
「わ、最初はクリリンさんだ」
対戦相手は彼よりも遥かにデカい。けれどちっとも恐れている様子はなく、冷静だ。
今までずっととんでもない相手とやり合ってきたクリリンは対格差なんて大した問題ではなかった。
軽々と相手を場外へ落とした。流石、世界一。・・・・・・地球人の中では。
「ふふふー。クリリンさん強い!次はピッコロさんか・・・あれ?」
ピッコロの対戦相手はシンという名の正体不明の選手。悟宙は彼に何やら違和感を感じた。
あの人は普通の人じゃない、地球の人じゃない。悟宙の勘がそう訴えていた。
それだけではない、何か嫌な予感がする。
「す、すまない・・・棄権する」
ピッコロは戦わずに棄権してしまった。ますます悟宙の不安は大きくなる。そして、嫌な予感も膨らんでいく。
楽しいお祭り感覚だった気分が、その嫌な予感で塗り潰される。自分の予感はよく当たることを悟宙は知っている。
きっと気のせいだと、絶対に気のせいだと沈んだ気持ちを奮い立たせる。
「ビーデルさんの試合、始まってる・・・」
ぐるぐると考え事をしている間に試合は進んでいた。ビーデルの相手を確認しようと相手選手の顔を見た。
ぴきん、頭の中で何かが鳴った。それと同時にビーデルの膝蹴りが相手選手の顎にヒットする。
具体的な予感が悟宙の脳内を駆け巡った。手から離れた缶ジュースが中身を零しながら転がっていく。
「ダメ・・・このままじゃ、ビーデルさんが・・・」
目標は、兄の悟飯。慌てて兄の気配と気を探す。そんな離れた場所ではなかったため、すぐに見つかった。
見つけた気に自らが引き寄せられるようにイメージをして、ぎゅっと目を瞑った。
次の瞬間、悟宙は悟飯の目の前にいた。
「なっ・・・悟宙!?」
「お兄ちゃん!試合を止めて!早く!」
「どうした、悟宙。止めろって言われても・・・」
「死んじゃう!ビーデルさん、死んじゃうよ!」
あの人、真っ黒なの・・・!泣きじゃくりながら訴える妹に悟飯はうろたえる。一体、急にどうしたのだろうか。
試合は明らかにビーデルの方が押している。なのに何故そう思う?何故、死ぬと思った?
「悟宙の言う通りだ。試合を棄権した方がいい・・・!」
「お兄ちゃん、早く!止めてってば!アレは、ダメなの、良くないの・・・!」
その後、男はビーデルを甚振る。その様子は明らかに異常だった。悟宙はもう訴えることなく泣きじゃくっている。
ひたすら、何かに怯えているようだった。悟空は自分の娘の気持ちを落ち着かせるために、頭を撫でている。
けれど瞳は武舞台の方にあった。
「あ・・・あぁ・・・ビーデル、さん・・・やだ・・・」
ビーデルが弱っていくのが、感じられる。涙を堪えて悟空にしがみつく。自分が少しでも触れられれば助けることが出来るのに。
ビーデルへの甚振りが終わったのは、男の仲間らしき選手から窘めの声が入ってからだった。