魔人ブウ編

□学生時代
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二年生の夏。学年が一つ上がっても三人はいつも一緒だった。ただ何故かクラスだけは三人共バラバラだ。

学校生活に慣れ、三人はそれぞれ委員会などの学校運営に関わるようになった。

トランクスは周りからの推薦で生徒会に所属し、悟宙は生徒会からの誘いを断り風紀委員会に所属している。

悟天は色んなクラブから助っ人として借り出され、適度に力を抜いて大活躍しているようだった。

三人で一緒に帰ることがなんとなく暗黙の了解となっていたため、それぞれの用事が終わるまでいつも待っていた。

悟宙の委員会の集まりが終わるまで、悟天の助っ人活動が終わるまで、トランクスの生徒会ミーティングが終わるまで。

最も用事が多いのは悟天だが、最も時間がかかるのはトランクスだった。いつも悟宙は待つ係だ。

そんな理由から、悟宙の教室を待ち合わせの場所としている。


「だって悟天がっ!」

「だって姉ちゃんがっ!」


トランクスを迎える時、双子は喧嘩をしていることが多かった。今日もまた、同じだった。

トランクスが廊下を歩いていても数メートル先から二人の声が聞こえてきた。苦笑して、今日はどんな風に喧嘩の仲裁に入ろうかと考える。

この間は悟天に「姉ちゃんの味方ばかりして!」と言われてしまったから、今日は巧いことやってやろう。

そんなことを考えながら、双子の待つ教室へ向かう。すると、背後から人影が近寄って来た。


「やあ。ほんとにいつも三人でいるんだなぁ、キミ達って」

「・・・ああ、そうだな」


ぽんっと肩に手を乗せ、突然話しかけてきた男子生徒にトランクスは戸惑う。顔も名前も分からない。

変な奴だ、早く二人の元へ向かいたいのに。そう思うも邪険には扱えず、その男子生徒に付き合うことにした。


「それにしても、悟宙さんって鈍いよなー。自分が愛想振り撒いてるって分かってるのかな」

「・・・・・・そういう気は、ないだろ」


やっとのことで、トランクスはそう答えた。この男子生徒の言葉には明らかに棘があった。

反動形成、授業で教えられた言葉が浮かび上がる。イラつきが表に出ないよう、平静を必死で保っていた。

付き合ってやろうと思ったことに後悔した。早く無駄話を終わりにして欲しいと思う。


「分っかんないぜー?案外、色々と考えてるかも」

「フられた腹いせだろ。もう行っていいか?」

「違うって!お前の為に言ってるんだよ」

「は・・・?」

「ああいうタイプの女はさ、男を釣る方法をよーく知ってるんだよ」


何を話しているんだ、コイツは。ぐっ、見えないように拳を握って、湧き上がる怒りを我慢する。

こんな所で騒ぎを起こせない。自分が学校にいられなくなる分にはまだいい。けれど双子まで巻き込みかねない。


「キミってお金持ちなんだろ?くっついてるのもさ、財産目当てかもな」

「くっ・・・!」


だあんっ!何かが破壊される音が学校中に響いた。

トランクスにはもう、怒りを抑えるだけの理性は残っていなかった。


「お前に、悟宙の何が解るっていうんだ・・・!」

「ひっ、う、うわああああああっ!!!」


トランクスがさっきまで握っていた拳が、男子生徒の顔の真横の壁にめり込んでいた。壁の一部が崩れ、破片が散らばる。

悟宙はそんな打算的な人ではない、本当に何も解っていないのだ。箱入り娘で周りから大事に育てれられ、ずっと守られてきた。

人の好意には鈍感だけど人の悲しみや落ち込みにはよく気が付く。周りの女子生徒達とは、違う。

目の前にいる男子生徒にたくさん伝えたかった。けれど、それはとてももったいない気もするし、彼女のいい所をこんな奴に話すのは癪だった。


「どっ、どうしたのっ!?」

「と、トランクス君・・・!?」

「大丈夫っ?」


音を聞きつけた二人が教室から走って来た。

破損した壁と怯える一人の男子生徒、苛立ちを露わにする幼馴染を見て、双子はなんとなく察した。

悟宙はすぐさま、怯えにより体を震わせる男子生徒に駆け寄った。その姿にトランクスはさらに腹を立てた。


「立てる・・・?」

「ぁ、ああ・・・」

「一応・・・保健室、連れてくね?」


男子生徒は悟宙に支えられ、大人しく歩いて行った。その様子は先程の態度と打って変わって小さくなっていた。

悟天は姉と男子生徒を見送ってから、親友を見た。肩についている壁の破片を払ってやり、躊躇いながらも口を開く。


「・・・・・・トランクス君、理由きいていい?」

「・・・イライラする」

「ちょ、ちょっと何処に行くのさ!」


いつの間にか手放していた自分の荷物を拾い上げて、何処かへ歩いて行ってしまった。

追い駆けるか迷った挙句、悟天はその場の後片付けをすることにした。


「少し頭を冷やさせた方が良さそうだ」


それにこういう時は、自分よりも姉の方が巧くやれる。悟天はよく解っていた。
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