短編集
□ドラマよりも素敵な現実
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俺とセナは、二人であのドラマの最終回を見ることを約束した。
ドラマの始まる前に、セナが前回のあらすじを説明してくれた。ミキとカイのことを社長が知ってしまった所で終わったらしいのだ。
そして、ドラマの終盤・・・
「すまない、ミキ。お前が寂しい思いをしていることに、まったく気付かなかった」
「カズヤさん・・・」
「望むなら、俺から離れてくれても構わない」
「・・・っ」
「だが、忘れないで欲しい・・・俺はお前を愛している。心から大切にしたいと思っていた」
「私、貴方に愛されていないと・・・」
「そ、そんなわけないだろう!誰が好き好んで愛してもいない女と結婚するんだ!」
「っ!」
「・・・すまない。やはり、俺から離れて行かないでくれ」
「・・・ごめんなさい、ごめんなさい!私、 カズヤさんのこと・・・!」
「今だけでいい、今だけは、このままで・・・」
「愛しています、カズヤさん!貴方のことだけを、ずっとこれから愛していきます!」
「ミキ・・・」
「もう不安に思ったりしない!貴方を信じて、貴方を愛します・・・!」
二人は抱き締め合い、口づけを交した。
結果、ドラマの結末はセナの言う通りになった。驚きだ、彼女がこのドラマを作ったのではないかと疑うくらいに。
隣を見ると、言ったでしょ?と満足気にセナが笑っていた。
「なんで、こうなるって分かったんだ?」
「・・・女の勘、かな」
「女の勘はよく当たる、って母さんも言ってたな」
「ふふっ、まあ・・・私の願望でもあったんだけどね」
「えっ・・・」
「社長とミキって・・・ちょっと境遇が私達に似てたから」
巧くいって欲しかったんだ・・・とセナは言う。それはまさに、俺も感じていたことだった。
自然と身体が動いていて、気が付くと彼女を抱きしめていた。
「くす・・・トランクス、あのドラマの内容を聞いて、自分達と重ねて・・・不安になっちゃったんでしょ」
「なっ、なんでそれを!?」
「これは女の勘というか・・・トランクスの恋人だからって、言っておこうかな」
いつもいつも、セナは俺の一枚も二枚も上手だ。俺は彼女に負けっぱなしだ・・・。
気付かれていたことが少し照れくさくて、強く抱き締め直すことで顔を隠した。
・・・きっとコレの意味も、分かってしまっているのだろうけど。
「大丈夫、私はトランクスになんの不満も持ってないから」
「ほんとに、まったく?」
「もちろん。じゅーっぶんに愛してもらってますから」
「あまり、会えないけど・・・」
「会えなくても愛は感じられます」
「何もしてあげられてないし・・・」
「一緒にいるだけでも私にとっては幸せです」
「・・・・・・ほんと、セナは俺にはもったいない」
「そのお言葉、そのままお返し致しましょう」
耳元で、セナの楽しそうな笑い声が聞こえる。
これから先、何があってもセナを守って幸せにしてあげよう。
俺ができる、精一杯の力を駆使して・・・
「私はこうして会える日のために、毎日がんばってます。つまり、トランクスがいるから仕事もがんばれるのです」
「・・・うん。俺もだ」
せめて、プロポーズの時くらいはセナを驚かせて、負かしてやろう。そう心に決めた。
fin.