御伽噺書架

□七人の棲む森に迷い込んだ白雪姫は
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  むかしむかし或る国に、それはそれは美しいお姫さまがいました。
 お姫さまの名前は媛といい、王さまとお妃さまに大切に育てられていました。
 しかし、お妃さまは継母でした。継母にはお子が無かったので、媛を実の娘のようにたいそう慈しんでいました。

 お妃さまは、或る時不思議な鏡を手に入れました。それはどんな問い掛けにも真実を返すという魔法の鏡でした。
 お妃さまは鏡に尋ねました。
「この世で一番美しいのはだぁれ?」
 すると鏡は答えます。
「お妃さまが一番美しい」
 お妃さまは満足して、今日も媛と母娘のように過ごしました。

 そんな或る日のことです。
 お妃さまは魔法の鏡に立ち、いつものように尋ねました。
「この世で一番美しいのはだぁれ?」
 すると、鏡はお妃さまではない女の人を映し出しました。
「あなたも美しいが、媛が一番美しい」
「なんですって!」
 怒ったお妃さまは、召使いに媛の心臓を抜き取って殺すよう命じました。
 しかし、召使いは可哀想に思い、お妃さまに命ぜられたことを話して、媛を森へと逃がしてやりました。そしてお妃さまには、媛の心臓の代わりに豚の心臓を差し出しました。お妃さまは違いがわからず、たいそう満足そうにそれを頂いたのでした。



 森の中をさまよっていた媛は、おなかが空いて仕方がありませんでした。
 森の中は段々暗くなっていきます。獣の声が聞こえてきて怖くなってきました。
 その時、幸運にも赤い屋根の素敵なおうちを見つけました。
 媛はおうちの扉を叩きました。けれども返事はありません。
 媛は思い切って扉を開け、中に入っていきました。
 そこには誰もいませんでした。声を掛けても、家中ひっそりとしていました。
 媛はテーブルの上を見ました。
 テーブルの上には、七人分の夕食が用意されていました。どれもほかほかの湯気を上げ、美味しそうな匂いがします。
 ぐぅとおなかが鳴りました。媛は我慢出来ずに、夕食のパンをひとつ取って食べてしまいました。喉が渇いていたので、コップの水も飲み干してしまいました。
 そうしておなかがいっぱいになると、うとうとしてきました。眼を擦ってみても、眠くて仕方ありません。
 媛はふらふらと窓際まで歩いていきました。そこにはベッドが七つ、並んでいます。
 媛の一番近くにあったベッドに腰を下ろしました。そのベッドはとてもふかふかしていました。
 こてんと横になってしまうと、もう起き上がれません。媛は、そのまま眠ってしまいました。



 しばらくして、誰かが帰ってきました。
 彼らはテーブルの上をひと目見ると、ちょっと驚きました。
「あれぇ?なんか変じゃない?」
「ふむ。何者かが侵入した形跡があるな」
「そんなことすんのはどこのどいつだ」
「よし!いけいけどんどんで探しだすぞ!」
「・・・それはやめろ」
「そうだそうだ!家中暴れ回られても迷惑だっ!」
「ねぇ・・・僕のパンと水が無くなってるんだけど・・・?」
 七人は、家の中を探し始めました。そして程なくして、ベッドで眠る媛を見つけたのです。
「わぁ。見て、この娘の髪!すごくきれいじゃない?」
「それはともかく、こやつは誰だ?」
「何者かと思えば、こんなガキとは」
「ガキという程年が離れてはなさそうだが?」
「・・・文次郎が、老け過ぎなだけ」
「しっかしよく寝てるな」
「これ僕のベッドなんだけど、どうしたら・・・?」
 七人は媛をしばらく見つめていましたが、すやすやと眠る媛をそのまま寝かせてあげることにしました。

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